AWC 白の奇跡、黒の変事 3   永山


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#1124/1158 ●連載    *** コメント #1123 ***
★タイトル (AZA     )  19/04/01  09:40  (269)
白の奇跡、黒の変事 3   永山
★内容
「――」
 田町の顔色が変わる。血の気が引いたよう。学内探偵は言葉で詰め寄った。
「ぜひとも合理的な説明を聞きたい。田町さんにはアリバイがあるのだから、犯人とは
思っていないよ。とにかく僕は、状況を正しく認識したいんだ」
「待てよ、石動探偵さん」
 見かねた名和が、挑発気味の言葉を投げる。
「何かな」
「女性を相手にするときは、もう少し優しく接したら? 君みたいな急襲は、怯えさせ
るだけ」
「しかし、僕の疑問も尤もだろ?」
「田町さんの髪の毛があったからって、本人がその場にいたとは限らない。何者かが抜
くなり拾うなりした田町さんの髪の毛を、現場に置いたのかもしれないじゃないか」
「その可能性も無論、考慮に入れてるさ。犯人はあんな時間帯に、田町さんにアリバイ
が成立するとは夢にも思わず、偽装工作に走ったのかもしれない。そういったことも含
めて、今は彼女自身の口から意見が聞きたいんだ」
「無意味だ。田町さんにはアリバイがある。偽装工作だとしても、彼女の知らないとこ
ろで行われた。事件究明には役立たない」
「それは違う。少なくとも、田町さん自身に、毛髪が付着する状況に心当たりがあるな
ら、偽装工作の線は消せる」
「――」
 さらに何らかの反論をしようとした名和の肩を、牛尾が掴んだ。
「冷静になれ。石動が正しい」
「しかし」
「答えるかどうか、田町さんの次第だ。沈黙も権利、だよな、探偵?」
 牛尾の急な問い掛けに、石動は少しも動じず、「イエス」と即答した。そうして改め
て、田町を見据える。
「お願いします、田町さん」
「多分だけど、思い出したことがあるわ。ボタンが取れ掛かったのを、直してあげたの
よ。桜井君の制服の金ボタン。どれだったか忘れたけれども、第二じゃないのは確か」
 そのときの手つきの再現だろうか、身振りを交える田町。
「いつ、どこで?」
「昨日の放課後。五時にはなっていなかったと思う」
「昼休みのあとにも、会ってたんだ? なるほど。話の腰を折って申し訳ない。場所は
どこで?」
「第二理科準備室よ。ついでに言えば、二人きりだった」
 黙って聞いていた名和だったが、この返答には多少狼狽えた。返事をもらわない内か
ら、ホワイトデーの前日にあの狭い教室で二人きり?
「ふむ。となると、どうして準備室で会うことになったのかが知りたいな。バレンタイ
ンの答は翌日なのに」
「それは……今日の返事によってはそれで縁が切れるかもしれないと思ったら、ちょっ
とでも会っておきたくて」
「なるほどなるほど。心理的には筋道が通っていると言えなくもない。そこまで不安な
ら、今朝返事を聞く勇気を出すのも大変だったんじゃない?」
「そんなことは。朝起きて、外の雪を見たら、奇跡が起きるかもって感じたから」
「あ、そういう」
 石動が納得の表情を続けている。そんな学内探偵を見て、名和はようやく落ち着いて
きた。この分なら問題ない。
「ちなみにだけど、田町さんがそういう心理状態になるってことは、他の三人も似たり
寄ったりだったんじゃないかな」
「さあ? 他人の心の中は見えないから」
「五時前に会った際、桜井にそういう素振りはなかったのかな。他にも女子と会う予定
があって、待たせている感じとか」
「だから分からないって」
 田町の声が少しいらいらを帯びる。石動の質問の狙いがどこにあるのか見えない。
「合鍵を事前に預かったこと、他の三人には言った?」
「言ってないわ。ただ、桜井君は隠す気はなかったみたいだけど。伏せておいてあとで
知られたら、変に勘繰られるからっていう。だから聞かれてたら教えてたかもね」
「答えてくれてありがとう。うん、ますますこんがらがってきた」
 発言とは裏腹に、嬉しそうな石動。
「何だよ、解決に向かってるんじゃないのか」
 牛尾が呆れ口調で問い質すと、石動は「向かってはいるよ」と事も無げに答えた。
「実を言うと他の三人――児島さん、渡部さん、大森さんの内、児島さんと渡部さんは
昨日の下校時刻が午後五時前後なんだよね。だからってあの二人が桜井と会っていたと
は言えないが、どうしても気になる」
「細かいことを気にしすぎだ。クラスが同じなんだ。下校時間なんて、だいたい似たよ
うなものさ」
 名和が意見するが、石動は芝居がかった様子で首を傾げた。
「通常の授業進行がされているなら、その理屈を採用してもいいが、三月のこの時期、
試験も終わって割とフレキシブルだ。終わったあと、学校に残るか早く帰るかは分かれ
がちじゃないかな。児島さんと渡部さんは、バレーボール部と文芸部それぞれの活動に
参加しているが、終わったのは四時頃。田町さんを含めて三人が五時頃に下校というの
は、果たして偶然だろうか」
 名和と牛尾には答えようのない質問。自然と、注目は田町に。石動は改めて聞いた。
「帰宅部の田町さんは、桜井と会うまでの間、どう過ごしていたんだろう? 授業は午
後三時で終わったはず」
「……他の人達は? 下校するまでの間、何をしていたのか」
「うん? それを聞いてどうしようっていうのか知らないけど、まあ教えてあげよう。
驚くべきことに、二人とも図書室で時間を潰していたと答えた。ところが、図書室は蔵
書整理――傷んで修繕に回す本をピックアップするため、昨日開いていたのは昼休みま
でで、午後四時から一時間を過ごすなんてできない。文芸部の渡部さんが図書室の休み
を知らなかったのはミスだね。よほど重要な事柄に気を取られたのかな」
「間違いを質して、追及しなかったのか?」
 名和が我慢できずに割り込む。
「今はね。あとで切り札になる可能性を秘めていると判断した。ただ、もしも彼女達二
人が怪しいとなったら、今度はアリバイがないのが不自然だ。二人いるのだから、お互
いのアリバイ証言ぐらいしてもよさそうなものなのに。雪のおかげで誰にも現場を出入
りできない状況が偶然できあがってなければ完全に容疑者だ」
 石動のその評価は田町にも当てはまるように、名和には聞こえた。
「僕にそこまでの権限はないが、警察ならその内、児島さんと渡部さんの間で連絡を取
り合った形跡がないか、調べるかもしれないな。さて、こちらからの質問には答えてく
れないのでしょうか、田町さん」
「……大森さんと会ってたわ。あっちの方から声を掛けてきたの」
 田町が絞り出すような口調で答えた。
 まただ。また、秘密にしていたことが出て来た。名和は驚くのに疲労感を覚えた。
「放課後、帰りかけていたら、廊下で呼び止められて。何事かと思ったし、わざわざ付
き合う必要ないと考えた。でも、合鍵を預かったことを知っていると言い出して。なら
話を聞こうじゃないと思い直したの。それで……北側の裏庭に出たんだったかな。日差
しがなくて、あんまり人が行かないところよ。寒かったわ。大森さんが言うには、『田
町さん、鍵を預けられたり、バレンタインの返事一番目だったりして、期待してるかも
しれないけれど、ほどほどにしておいた方がショックが少なくていいわよ』だって。正
確な言い回しじゃないけど、こんな感じだった」
「ホワイトデー目前に凄いな。あの勉強のできる大森さんがねえ。喧嘩になったんじゃ
ない?」
「そんな暇なかったわね。あっちは言うだけ言って、帰ってしまったし。こっちはショ
ックでしばらく呆然としてた」
「呆然となったってことは、つまり、実は大森さんがすでに桜井と付き合っているんだ
と思った?」
「当たり前でしょ。あんな風に言われて、察知できなかったら馬鹿じゃないの」
「ま、そうか。で、そのあとどうしたの? 三時過ぎに大森さんとやり取りしただけな
ら、二時間もいらない」
「三十分ぐらい考えて、あることを思い付いた。二人にも知らせようって。だから部活
動が終わるまで待っていた。学校の中をぶらぶらしていたわ」
「二人っていうのは、児島さんと渡部さんだね。それから?」
「渡部さん、児島さんの順に声を掛けた。文芸部の方が少し早く終わったから。同じク
ラスだからかしら、いきなりの話でもちゃんと聞いてくれたわ。話したあと、誰かが―
―児島さんが言い出したんだったかな。本人を問い詰めに行こうって。最初、大森さん
にと思ったら、桜井君にだって。考えてみれば、大森さんを問い詰めて水掛け論になる
よりは、桜井君に直に聞きに行く方が建設的よね。そこで三人で桜井君を探すことにし
て、とりあえず第二理科準備室に向かったの。そうしたら彼、まだ下校してなくて、そ
こにいた」
「佳境に入る前に確認だけど、さっきしたボタン云々のエピソードは?」
「嘘よ」
 あっさり認める田町。その様子に、名和は内心でまたまた衝撃を受けた。慣れない。
顔に出ないようにするのに必死で、喉が渇く。
「桜井君は部屋に一人でいて、便箋に何か書いていた。私達が入って行くとすぐに隠し
てしまったけれども」
「ノックせずに入ったのか」
 牛尾が言った。この場にふさわしいようなふさわしくないような、微妙なライン上の
質問だ。田町は彼の方を向くと、早口で答える。
「桜井君を探していたんだから、鍵が掛かっているかどうか確かめる意味で、強く引い
たのよ。そうしたら開いちゃったって訳」
 それから再び探偵へと向き直った。
「このあとも言いましょうか」
「ぜひ」
「桜井君、目を丸くしてびっくりしてたわね。私達が大森さんの話をぶつけて、とっく
の昔から付き合ってるんじゃないのって詰問したら、即座に否定した。私達もすぐには
信じられなくて、証拠を出してとか、スマホを見せてとか、無茶な要求をした」
 証拠を出せだのスマートフォン云々だのが無茶という認識はあるんだ、と名和は少し
安堵する。この分なら、まだ平和で冷静な話し合いができたに違いない。
 ところが。
「ただただ否定するばかりで要領を得ないし、合鍵を私に預けたことを大森さんが知っ
ていたいきさつも、何だかはっきりしない言い種だったから、児島さんと渡部さんが収
まらなくて。私? 私はこの二人に内緒で合鍵を預けられた立場でもあるから、一歩退
いて見ていたつもりよ」
「その辺はともかくとして、桜井の弁明はうまくなく、女子の不満は解消されなかった
と。それから?」
「……信じてもらえるかどうか」
 不意に声量が小さくなる田町。不安げな眼差しを名和に送る。前日のその修羅場に居
合わせなかった名和には、どうしようもない。「正直に話すしかないよ、多分」とこれ
また小さな声で呟くくらいしかできなかった。
「いきなり、児島さんが近くにあった顕微鏡を持って、高く振り上げたの。脅かすつも
りだったんだと思う。事実、素直に白状してとか、そんなこと口走ってたし。それを見
て、渡部さんが本気にしちゃったみたい。慌てて児島さんの腕にしがみついた。後ろか
らだったわ。まさか味方のいる方角から余計な力が加えられるとは想像してなかったん
でしょうね、児島さん、顕微鏡を取り落としてしまって。桜井君の頭に当たった」
 静寂が降りた。顕微鏡は不幸な偶然の連鎖で、桜井茂の頭に落ちたのか。
 だが、謎はまだ残っている。いち早く静寂を壊したのは、もちろん石動。
「桜井はどうなった?」
「短い呻き声を上げて……あんまり思い出したくないのだけれど、ここまで喋ったら、
もう言わなくてはだめなのよね」
「そう願いたい」
「……呻いて、静かになって、蹲ったわ。それから『痛え』とか言いながら、床に仰向
けに。血が少し出ていた。児島さんも渡部さんも狼狽えてた。どうしようどうしようっ
て繰り返したり、桜井君に謝ったりして。私はポケットティッシュを出して、血を拭っ
て上げようと思ったのだけれど、二人が邪魔ですぐにはできそうにない。そのときふと
転がったままの顕微鏡が目にとまって。拾ってテーブルに置いてから、丁寧に全体を拭
ったわ。」そのあと、二人が多少落ち着いてきたから、桜井君のそばに駆け寄って、血
を拭いた。髪の毛が落ちたのはこのときかも。桜井君、“事故”のきっかけを作った児
島さんと渡部さんに対しては、邪険に腕で払う動作をしていたのに、私が近くに来たら
大人しくなったから。だから、二人の髪の毛は、彼の身体の上に落ちなかったのかもし
れないわね」
 思い出したくない出来事を語りつつも、冷静に分析してみせる田町。
「桜井君はずっと意識があって、命に別状があるなんてとても見えなかった。その上、
あんな目に遭って血まで出たのに、怒らずにいてくれた。きっぱりと、『まだ誰とも付
き合ったことないから。明日になれば分かるから』って言ったのよ。もう信じるしかな
いでしょう?」
「確かにね。しかも君達に希望を与える言葉に聞こえる」
 石動は口ぶりこそ軽めだったが、表情は厳しくなっていた。
「そのあと、どうなった?」
「病院か、せめて保健室へ行こうと言ったんだけど大丈夫だって、桜井君。一人にして
くれ、しばらく休んでから帰るって。椅子に座り直してまた筆記用具を出す様子だった
から、本当に大丈夫なんだと思えた。私達三人は部屋を出て、ばらばらに帰ったわ」
「準備室から去る間際、桜井の姿が見えていた?」
「ええ。扉を開けて、すぐ目に入る位置だった」
「当番の西谷先生が見回りに来たときは、見えにくい場所に移動していたことになりそ
うだな」
 考えるためか、口を閉ざして静かになる石動。
 名和はその間、田町に何か言葉を掛けようとした。しかし、感性を総動員しても何ら
よい言葉は浮かばない。
「田町さん、事実なら、関係している女子二人と早く会うか、少なくともいつでも連絡
が取れるようにしておくべきだ」
 牛尾が言った。
「連絡ならいつでもできるわ」
「だったらすぐ取ってみたら? 児島さんと渡部さん、二人ともに知らんぷりされた
ら、君だけが立場を悪くする」
「そんな」
「クラスメートといったって、元々、恋敵だったんだろう? 己かわいさに保身に走っ
てもおかしくない」
 牛尾の極論を、名和は今日何度目かの驚きを持って聞いていた。こんなにドライな計
算ができる奴だったんだ、と。
「名和もそう思わないか?」
「あ、ああ。僕は何とも言えないけど、最悪のケースに備えるのは大事だと思う」
「そう言うんだったら」
 携帯端末を手に取る田町を、やり取りを聞いていたのか石動が手で制した。
「しなくていい。現在、児島さんと渡部さんには、見張りが付いている。最低限、身を
隠されないようにするためだが」
「見張り? って、それ、警察の人?」
「違う。警察だって張り付いているかもしれないけど、僕が言ったのは、僕と同じ学内
探偵」
「なに、他にもいるのか」
「当然。考えれば推測可能だろ。少なくとも一人、女子の学内探偵がいるとね」
 言われてみれば確かにそうだ。
「石動を含めて、三人以上いるんだな?」
「イエスとだけ答えとくよ。あっ、今回は僕が主導しているんだ」
 一体全体いかなる組織系統になっているのか。尋ねても教えてくれまい。こうして石
動が正体を明かしていること自体、特例と言えよう。
「さて、こちらが掴んでいる情報でも、大森さんが以前から桜井茂と付き合っていたと
いう話は全く出て来ていない。恐らく、大森さんのブラフ、はったりだったのだろう」
 石動の見解に、田町が「あの女――」と舌打ちする。
「まあまあ、落ち着いて。大ごとになってしまったが、桜井が嘘を吐いていなかった点
だけは、よかったと言えるんじゃないかな」
「そんな悠長なこと言ってられないわよ。下手したら私達みんな捕まるでしょ? 傷害
か何かで」
「今さっきの話が正確なら、田町さんは関係ないみたいだけどね。事故ということで決
着したいのは山々なんだけど、当事者が命を落としたからな」
「桜井が死んだのって、さっきの怪我と関係あるのか? 確か、二度、殴打された痕跡
があったと聞いたから、二度目の殴打で亡くなったんだとばかり」
 名和が捲し立てる風に聞き返す。その勢いを押さえつけるかのように、石動は両手を
広げた。
「推測の域を出ないんだが、死亡推定時刻に人の出入りがなかったことが雪のおかげで
証明されている以上、状況を説明可能なのはこれしかないんじゃないかという仮説が浮
かんでいる。つまり――頭部に衝撃を受け、脳内出血が起きたとして、その量がごく僅
かずつになる場合がある。最初の内は本人がたいして重傷じゃないと判断し、自由に動
き回れることすらある。だが、きちんと診察・治療を受けないまま過ごしていると、
徐々に血が溜まって脳にダメージを与え、不調を来す。動作に支障が出て、たとえば前
のめりに倒れ、机の角で頭を打つなんてことも起こり得る。桜井茂は恐らく今言ったよ
うな過程を辿り、亡くなったんじゃないか、と」
「――いやいや」
 名和は反論の声を上げた。
「体調がおかしいと感じたなら、助けを呼ぶのが普通だ。桜井は携帯端末の類を所持し
てなかった? そんなこと絶対にない」
「端末の解析は警察がやっている最中で、僕はその内容を全く知らない。だからこれま
た推測しかできないが、多分、桜井は田町さん達を帰したあと、しばらくしてから意識
を失ったんだと考える」
「えっ?」
 短い叫びを漏らしたのは田町。両手のひらで口を覆っている。
「準備室の中、棚の向こう、奥に歩いて、出入り口から見えない位置に来たときだった
んだろう。床に崩れ落ちた。そのまま時間が経過して、西谷先生によって施錠される。
桜井が再び覚醒したのが午後九時半以降。すでに相当な体調悪化を自覚したに違いな
い。寒さもあるしね。病院へ行こうと考え、内側から扉を開けたまではよかったが、も
う自力では動けそうにない。次は当然、電話を使って助けを求める。ところが電話は倒
れた拍子にどこかに転がってしまっていた。探すために立ち上がり、床に目を凝らそう
として、再び倒れる。このとき頭を長机にぶつけた。この二度目の衝撃が即座に死をも
たらしたのか、あるいは単に意識不明に陥っただけで、死亡はその後の脳内出血の継続
によるものかは、専門家に判断を任せる」
「……」
 空気がひどく重くなった。沈黙が上から押さえつけてきている。
「絶対確実な証拠はない」
 石動が再び口を開く。
「ただ、これなら説明が付くんだ。雪の謎やアリバイは関係なくなるし、犯人が寒さを
我慢しつつ朝までやり過ごしたという心理的にあり得ない説を採らずに済む」
 学内探偵の示した最有力の結論。
 すすり泣くような声がした。田町からだった。短い間だけだったが、確かに彼女は泣
いていた。
 名和は田町のその姿を見て、少なからず安堵できた。

             *           *

 完結




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 続き #1125 白の奇跡、黒の変事 三   永山
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