AWC ◆シビレ湖殺人事件 第4章・ヨーコー5


        
#1057/1158 ●連載    *** コメント #1056 ***
★タイトル (sab     )  16/02/08  17:27  (172)
◆シビレ湖殺人事件 第4章・ヨーコー5
★内容
《はい、お疲れー
それでは今日も講義を始めたいと思います。
えー、まず、前回までの復習から。
えー、まず第一回は、人間には過剰と去勢がある、ということを言ったよね。
例えば、血液なら、造血幹細胞からリンパ球が出来るのが過剰であって、
骨髄その他で自分を攻撃してしまう様なリンパ球を阻害するのが去勢である、と。
或いは タンパク質なら、遺伝子からタンパク質が合成されるのが過剰であって、
ゴルジ体で体に合わないタンパク質を阻害するのが去勢である、と。
それで、この過剰というのは、なんか、光合成みたいなものであって、
太陽系的なもの、
一方、去勢というのは、宇宙の磁気が骨髄に宿って行われる、というような、
銀河系的なもの、と言ったよね。
それから第二回目は、
クローン選択説というリンパ球成熟に関する現在の定説があって、
それは 人間はあらかじめひとそろいのクローンを遺伝子の中にもっている、
というもので、
それに対して、実はそうじゃなくて、骨髄とかに宇宙の磁気が宿って、
それで濃淡のあるクローンを作って行くのだ、
というクーロン選択説を言ったんだよね。
それから第三回目は、そういう、クローン選択説なんていうのは、
私に言わせればMADなんだけれども、
なんでそんな仮説を言うのか、というと、
それはイエルネという人が、実験を離れちゃって、
古城で一人妄想するからそうなってしまう、とか言ったんだよね。
実験で絶えずリアルに接していればそんな事にはならないのだが、
実験を離れて非連続が発生した瞬間にMADになる。
そういえば、斉木君もミキと手をつないでいる間は、
ミキにも花も根もあるんだなあ、と思えるが、
手を話した瞬間に脳内ミキが立ち上がってきて、そのミキは、
ウンコも屁もしない空気の精、みたいになっちゃうんだ、とも言ったんだったよね。
以上が前回までの復習。

さて、今日は、悲しい事に、男子に続いて、とうとう女子の犠牲者が出てしまったね。
それは一体何が起こったのか。
男子が居なくなったので、鯛の一種みたいに、性転換が起こったのか。
或いは、アブラムシみたいなものなのか。
アブラムシというのは夏の間にはメスだが秋になるとオスになるんだね。
8月も下旬にさしかかったので、そうなったのか。
いやー、高等生物にそんな事が起こる訳がない。

それじゃあ、ヨーコ君には何が起こったのか。
もしかしたら、ホメオティック突然変異が起きたんじゃないか、とも考えられる。
これは何かと言うと、例えばエドワード・ルイスという人は、
ハエの頭部のHOX遺伝子の突然変異によって、
頭から脚が生えてくる、という奇形を発見したが、
もしかしたらヨーコ君にもHOX遺伝子の突然変異が起こって、
それでペニスが生えてきたんじゃないか。
…ということで、今日はHOXというのについてちょっと喋ってみたいと思う。
それでも最後には又クーロン選択説に関わってくるのだが。

じゃあ、HOXっていうのは何か。
その前に、ヒトって、受精卵から始まって、2つ、4つ、8つ、と分裂して行って、
ある細胞は目に、ある細胞は脚になるでしょう。
同じDNAなのに。
それは、どうしてかというと、ヒトの細胞が分裂して行って、極性…臍の方を植物極、
背中の方と動物極と言うんだが、それがどんどん分裂していって、
どんどん極性が出てきて、

そうすると、頭節、胸節、腹節、と大まかな体節が決まってくる。
そうすると、HOX遺伝子という遺伝子郡が作用して、
頭節では、遺伝子の頭に関する部分だけをONにして、
腹節では遺伝子の腹に関する部分だけをONにする、という事が起こる。

具体的に言うと、脊椎動物だったら4つの染色体上に、
HOX遺伝子群という一群の遺伝子の並びがあって、
つまり、ながーい遺伝子の一部に、HOX遺伝子というのがあって、
で、これも、遺伝子だから、3'側と5'側があるのだけれども、
この遺伝子郡の3'側に位置する部分が作用すると、
ながーい遺伝子全体に関しては頭に関する部分がONになって、
5'側に位置する部分が作用すると、遺伝子全体では尾っぽに関する部分がONになる、
みたいな事が起こる。
実際には、3'側に位置する部分が作用すると、或るタンパク質を生産して、
それが転写因子に影響を与えて、タンパク質合成の時に、
頭部の構造に関する遺伝子だけを活性化させる、という事が起こるのだけれども。

そうすると、
同じ遺伝子でも、頭にあれば、3'側が作用するので、
頭部に関する遺伝子だけが活性化して、目、鼻、口とかが出来る、
胸部にあれば、3'〜5'の真ん中辺が作用するので、
胸部に関する遺伝子だけが活性化して、おっぱいとか腕とかが出来る、
腹部にあれば、5'側が作用するので、腹部に関する遺伝子だけが活性化して、
尻とか脚とかが出来る…という感じになる。

分かる? 同じDNAでも、頭部にあれば、目になったりするんだけれども、
腹部にあれば脚になったりする、と。

まあだいだいHOXというのはそんな感じなんだが。
あと、補足説明というか、このHOX遺伝子群で面白いのは、
人間でも、ハエでも並びが非常に似ていて、
ハエのHOXを壊して人間のを移植しても、作用する、
というぐらい似ているんだよね。
これに関する現在の定説は、共通祖先の名残がHOXに残っているから、
とか言われているのだが。
ただこのことに関して、私は、同じ太陽の影響を受けているんだから、
ヒトでもハエも頭は上にあるんだと考えた方が自然だろうと思うのだが。
ひまわりが太陽を向いているのはお日様を浴びたいからだ、とかいうと、
目的論だ、とか言われそうだが、そう言われてもやっぱりそうだろう。
というか、前から私は、発生の段階では、
太陽系とかそういう過剰なるものが原因している、と言っているのだから、
同じ太陽系にいる生物は、同じHOXの並びをしていても普通なんじゃないの。
わざわざ共通祖先の名残なんて言わなくても。

あと、もう一つ面白いのは、
頭節ではHOXの3'辺りが作用して、
胸節では真ん中へんが作用して、
腹節では5'辺りが作用する、と言ったが、
遺伝子での状態での並びと、それが発現して体になった場合の並びが一致している、
というのは不思議だと思わない? 
この不思議さにピーンとこない? 
だって、細胞の構造を思い出してもらいたい、
細胞があって、核があって、その中にDNAがあって、
その中にHOX遺伝子群があるんだが、
そのHOXの並びと、個体の並びが同じだなんて、
丸で、HOXをよーく見たら、頭、胴、脚が見えた、
ぐらいに不思議なことなんだが。
お前らにピーンとくるかな。
だってその細胞が60兆個集まって一個の人間を作っているのに、
60兆分の1個の遺伝子の並びも、頭、胴、脚の順番になっているんだよ。

このことに関しては、現在の定説っていうのは特になく、謎とされているんだね。
ただ私に言わせれば、
これは、過剰と去勢の去勢の方で説明出来るんじゃないかと思う。
私は、前から、遺伝子自体は太陽系で出来ていても、
遺伝子のコピーとなると、
DNAポリメラーゼの亜鉛酵素が磁力によって活性化なんたら、
ということを言っていたと思うんだが、
今回のHOXが発現するというのも、結局はコピーの段階の事だから、
磁気的に説明出来ると思うんだな。

それはどういう事かというと、
まず、HOXを模式図的に言うと、
3'側から5'側が、頭から尻尾って感じで並んでいるのだから、
これを、自転車のギアみたいな凸型のギアとして考えると、
3’←凸←5’ という様な感じのギアになると思うんだが、
この凸型の回転軸に与えられるエネルギーが強くなるに従って、
どんどん先っぽの小さいギアへとシフトしていく、と考えると、
この回転数を磁力、凸型のでっぱりを電気と考えると、
アンペールの法則の右ネジの法則みたいに考えられるだろう。
回転数、つまりギアを回す力が大きいほど、ギアの先の方まで、電気が到達すると。
そうすると、磁力に関しては、さっきちょっと触れたみたいに、
腹側が植物極、背中側が動物極で、更に背中側が又分裂していって、と、
どんどん極性が、つまり磁場が強くなる訳だから、
そうすると、腹より背中、背中より頭の方が、極性的に、磁力は強いのであるから、
頭のてっぺんでは、磁力的回転力が強いから、
ギアは先端の方に移動している、
つまり、3'末端のHOXがアクティブになっていて、他はスリープ、
という状態になっている。
そうすると、目の位置では、遺伝子の全てが目を作ろうとする、という理屈になる。
分かるかな。
この理屈を上手く使えばips細胞だって磁気的に作れるかも知れないんだぞ。
まぁ、それはいいんだが。
とにかく今日言いたかったのは、HOX遺伝子における太陽系と銀河系の関係でした。
どうだろうか。驚きをもって理解出来たであろうか。
それともカリキュラムもだんだんきつくなってきたので、もうぼーっとしているか。

あと、ヨーコ君に起こったことをちょっと言っておくと、
シビレ湖にきて、環境も変わったので、磁力がHOX遺伝子に与える影響も変わって、
それで、もともとあった染色体異常がアクティブになった、
という事も考えられるかも知れない。
いや、そんなことはないよ。
突然変異というのは遺伝子レベルで突然な訳で、
発現の段階で突然に起こるものでもないので、
別にシビレ湖に来たからどうこうなるってものじゃなくて、
元からあった染色体異常が、徐々に発現していった、ということじゃないのか。
そんな事は最初から分かっていたのに、なんだか、
ヨーコ君に関係あるかのように言って出汁にしちゃった感じだが。

今日はこんなところです。
それでは明日はとうとう最終日ですが、
残りの皆さんは怪我などないように注意してカリキュラムを終わらせて下さい。
なお、最終回の放送は、午後2時から開始しますので、
バッテリーを交換して待っていて下さい。以上。




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