AWC ◆シビレ湖殺人事件 第1章・ヒヨリー4


        
#1036/1117 ●連載    *** コメント #1035 ***
★タイトル (sab     )  16/01/15  16:37  (113)
◆シビレ湖殺人事件 第1章・ヒヨリー4
★内容
30分ぐらいすると、テーブルの上は空き袋とペットの山。
隣のミキが、奥歯の臼にへばりついたカスを舌の先っぽで取ろうとしながら
「かえってノドが乾いちゃったね」などと言っている。
「誰も来ないんだったら帰ろうか」と牛島。
「居たってしょうがないものなあ」と春田。
全員あくびなどしてだらけた感じだった。
突然、部屋の奥に設置されてあったテレビがONになった。
「おー、なんだ、なんだ」。一様にざわめく。
最初画面がぱっと光って、真っ暗になって、少しすると人影が映し出された。
《ああ、聞こえている? もう映っているの?》
放送事故みたいに画面と外れた方向に喋っているのは、生物の教師だった。
一学期の間、理科室で見ていた顔だ。
彼は、はっと気付いたように画面の方を見ると、
あわてていずまいを正すと話し出した。
《みなさん、こんにちは》ううん、と咳払いなどしてノドの調子を整えている。
《えー、今日は遠路はるばるご苦労様でした。
みなさん、スナック菓子は食べ終わったかなぁー。
みなさんが一服したところで、
それじゃあ、そろそろカリキュラムについて説明をしたいと思います。
担当は、生物のタムラです。
私の事を恨んでいるかなー。
なにしろ私のせいでそこに居るんだから。
悔しかったらねぇ、何時も言っているように、
教育委員会にでも就職して私をクビにしなさい、クビに》

「これ、マジかよー」とか言ってみんなが騒ぎ出した。
「向こうからも見えているのかも」とか
「どっかにカメラが仕掛けてあるんじゃないか?」とか言ってキョロキョロする。
「いいから、今は画面に集中して」とミキがみんなを制するように手を広げた。
そして画面の中でナベサダ…というのはサックス奏者の渡辺貞夫に似ている
からなのだが、そいつが喋り出した。
《えー、それでは 時間とバッテリーの無駄にしない為に、さっそく、
カリキュラムについて説明したいと思います
それは、先にみなさんに郵送したプリントにも書いてあった通り、
これからの4日間でみなさんの内の2名を選抜するというものですが、
えー、まず、カリキュラムは、昼の部と夜の部に分かれています。
とりあえず、夜の部に関して言うと、これは、このディスプレイ、
今みなさんが見ているディスプレイで生物の講義を行うものです。
みなさんは、時間がきたら、必ず新しいバッテリーをセットして、
ディスプレイの前で待っていて下さい。
バッテリーはこのディスプレイの下の箱にあります。
ちなみに今夜の放送は、7時です。
夜の部に関しては、それでスタートするのでいいとして…。
えー、次に昼の部ですが、これは、4日間にわたって、
農・林・水産・畜産の野外実習をしてもらうものです。
これは偏差値的にどうこうというのではなくて、
みなさんの本当のところを知りたい、というものですから、
結構実践的なカリキュラムになっています。
えー、まず初日の今日ですが、農業です。
今日これから畑に行って芋掘りをしてきてほしいの。
今、君らのいるシビレ湖を時計に見立てると、
2時の方向に脇道がありますから、
そっから入って行って、畑があるから、そこで芋掘りをしてきてほしい。
詳細な地図と道具は地下室にあるので、後で見ておいて下さい。
それで今夜は芋を食べて下さい。
諸君らの居るロッジにある食べ物は、今食べてしまったスナック菓子以外には、
レトルトご飯10食と『さしすせそ』と固形燃料一回分だけですから。
その燃料で今夜は芋の料理を作って下さい。
そんで、芋を食べ終わったら、このディスプレイで講義を聞く、と。
それが今日のカリキュラム。
そして2日目は林業です。
時計の文字盤で1時のところから脇道に入って行くと伐採場があるので、
そこで木こりをやってきて下さい。
君らに与えた固形燃料は初日でなくなるから、煮炊き用の撒きをとってくる。
でないと、生の芋を食うハメになるから。猿みたいに。
道具はさっき言った通り地下にありますから後で見ておいて下さい。
そして3日目は水産。
時計で言うと、11時の方角の湖面にイケスがあるから、
そこで、モリでついて魚を獲ってきて下さい。
イケスは2重構造になっていて、内側の網をせばめると魚が寄ってくる様に
なっているので、そうやって獲る事。
この日までは芋ばかりでぱさぱさしているし、タンパク質も不足しているだろうから、
魚でも食って、良質なタンパク質を補給するように。
獲物は淡水魚だが、刺身にするもよし、薪があるなら煮炊きするもよし。
芋もあるから結構な料理が出来るぞ。
そして最終日は畜産。
時計で言うと10時の地点から脇道に入ると、
家畜小屋があって、家畜が一頭つながれているから、
それをと畜して、解体処理してきてください。
と畜の方法は道具を見て自分たちで想像して下さい。
と畜はどうかなぁ、と思うかも知れないけれども、
料理としては日々豪勢になっていくのだから頑張ってもらいたい。
以上が学校の用意したカリキュラムの概要です。
これだけ聞いてもぴーんと来ないかも知れないが、地下に地図、道具があるので、
その道具から想像して実行して下さい。
あ、そうそう、あと雨の場合にはそれぞれのカリキュラムを順延するものとします。
その際、芋が無かったら、余ったレトルトご飯を食べてよし。
えー、学校は、このカリキュラムで優秀な者2名を復学させる予定です。
が、さっきも言ったとおり、本当のところを知りたいので、
何も、早い者、強い者が優秀っていう訳でもないんだよね。
例えば、馬、ロバ、ラバの中では、馬はもっとも速いが長距離ではばててしまう。
ロバはもっとも強いが、スピードが無いから敵に襲われる。
ラバがその中間だが、ラバだけを残したら生殖機能を持たないので絶滅する…。
つまり学校としては遺伝子レベルで優秀な者を求めているんだが、
まぁ、そんな事を言っても、それこそ馬の耳に念仏か。
だから、とにかく、諸君は勝とうと思わないで、何も考えないで、ただやれば、
こっちで判断しますから、その積りで。
とりあえずの説明はここまでです。
それではみなさん、ケガや病気には十分に注意しつつ、
まず初日の芋掘り、頑張って来て下さい。
それでは今夕7時に又会いましょう。
それじゃあ、みなさんこれで終わります。じゃあまた》
ナベサダの映像がカクっと静止した。と思ったら、スーっと画面が暗くなる。
部屋の中が薄暗く感じられた。
みんなは顔を見合わせている。
「牛を殺せだって」春田がぼそっと言った。
「そんな事、やれんかよ。カエルの解剖と違うんだぜ。やっぱ帰ろうぜ」と牛島。
しかしみんなは、下を向いてうーんと唸っている。
やっぱりここで帰ったら何の為に来たのか分らないし、
それにそんな事をしたら退学でしょ。つーか考えがまとまらない。
「とりあえず、地下室というのを見に行ったら?」と斉木が言った。
「そうだなあ」牛島が皆の様子を伺った。
みんなは顔を見合わせて、何気、合意した。




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