AWC バスに泥水をひっかけられた


        
#389/550 ●短編
★タイトル (sab     )  11/03/21  13:27  ( 70)
バスに泥水をひっかけられた
★内容
もう3、4年前、俺は府中の某銀で派遣社員で働いていた。
或る雨の朝、府中駅から銀行に向かって甲州街道の歩道を歩いていたら
いきなりKOバスに泥水をひっかけられて、ズボンの右側がずぶぬれになった。
バスを追いかけていったが、大国魂神社神社の方へ左折すると加速して消えて行った。
このやろーーーー。と思ったね。
銀行につくとフロアに一個あるカード式公衆電話からまず府中警察に電話。
確か道交法上でも歩行者に泥水をひっかけたりするのは問題があると
記憶していたからだ。
しかし警察はそれだけでは違反切符は切れないという。
「じゃあ泣き寝入りですか」と俺。
「直接バス会社に文句を言ってもらうしかないね」
というんでKOバスに電話して、バスのナンバーと時刻、その他の状況を告げると
「運転手に確認します」とか言われて5分ぐらい待たされる。「確かにその時間、
そのバスは仰る場所を通っているのですが」
「じゃあ、認めるんだな、認めるんだな」
「気が付かなかったと言っていますが」
「気付かねえ訳があるかよ、俺はこんなに濡れてんのに」と俺はズボンの
太もものあたりをつまみあげた。
「どうもすみませんでした」
「済みませんで済むかよ。こっちはこれから1日濡れた背広で
仕事をしなくちゃならないんだぞ」
「すみません」
「すみませんですむわけねえだろう。これだけの事しておいて。
あやまってすむなら警察は…」と言って警察に相手にされなかった事を思い出して
言葉を飲み込む。「とにかく、こんな酷い目にあわせておいて
何にもなしなんてありえねえ」
「はぁ」
「5万円だ」と俺は言った。「5万よこせ」
「それはできません」
時計を見たらもう始業時間を過ぎていた。
それにこれ以上テレカの度数を減らす事自体馬鹿らしいので、
「じゃあ、今日の夕方、府中駅で待っていろよ。そんでこっちから電話すると
銭がもったいないから俺の携帯の番号を教えておくから6時半にそこに電話しろ」
と言って夕方向こうから電話がかかってくると
ドトールで待ち合わせて文句の続きを言う。
「いったいこれ、どうしてくれるんだよこれ。もう乾いてしまったけれども、
うっすら染みが残っているだろう。それに汚れなんかよりも1日濡れたズボンを
履いている身になってみろ」
「すみません」とおっさんの方が言った。(40歳ぐらい。20代後半の若いのも
ついてきたが)。
「すみませんで終わりなのかよ。そんな事ってありえるのかよ。
何にもしてもらえないのかよ。損害賠償ってないのかよ」
「それは出来ません」
「5万は無理でも3万ぐらいは普通だろう」
「それもできません」
「じゃあいくらだったら出せるんだよ」
「クリーニング代だけです」
「ふざけんなよ。こんなのクリーニングに出しても千円ぐらいだろう」
「領収書をもってきて下さればいくらでも払います」
「わざわざ高いクリーニング屋を探したって、こっちはなんの得もない」
などと2時間ぐらい怒鳴っていたのだが、俺は腕時計のガラスを指で叩きながら
「こんな事何時までやらしているつもりなんだよ」と怒鳴る。
「そちらさまの気の済むまでお話はうかがいます」と言った瞬間に、「こっちは
こうやってクレイマーの相手をしている間にもちゃんと残業手当がでるんだぞー、
そういう金もKOの利用者からみんな取っている独占企業だんだぞー、
という頬の筋肉を微妙な動きを察知した俺は
「おめー、ふざけやがって。そんだったら、クリーニング代なんていらねえから、
このコーヒーをおめーにぶっかけて、それでお互い様でもいいのかよ」
「それでお客様の気がすむんでしたら」
「じゃあ表に出ろ」
と言って俺はグラスを持って立ち上がった
「しかしグラスを勝手にもって出ては」
「構わねえ」と俺。
そして表に出ると、KOのおっさんのYシャツの中にどぼどぼどぼと
コーヒーと氷を流しいれる。
隣の若い奴は「どうぞ私にもぶっかけてください」と言っていたが無視して
どぼどぼおっさんにぶっかけて空になったグラスを胸倉に押し付けて、
帰ろうと思って振り返ったら、周りは黒山の人だかり。
ありゃあ、警察でもパトロールしていたら逮捕されたかも知れなかった。
それにKOといえば大手だから地元警察とは色々関係があるかも知れないし。





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