AWC 条件反射殺人事件【5】


        
#563/569 ●長編    *** コメント #562 ***
★タイトル (sab     )  20/11/03  17:24  (232)
条件反射殺人事件【5】
★内容
翌日、時任は、夜勤明けで眠たかったが、萬田郁恵を誘い出すと、
前回と同じラブホにしけこんだ。
『ピカソ』という名前の部屋。
「新宿の目」の様なアメーバーの様なオブジェが壁にあって
そこが間接照明になっている。
時任は萬田郁恵とベッドに寝そべると、いきなり脱がせたりしないで、
スマホを取り出した。
「君は、ユーミンを好きになるべきだよ」と時任は言った。
「ユーミンが嫌いなんてひねくれているよ。
僕もそうだけれども。
ユーミンとかサザンなんて恋愛資本主義には付き物なんだし、
それに毎日放送で流れてくるんだから好きになるしかないよ」
言いながらスマホをいじくって、LINEを開くと萬田郁恵の名前にタッチした。
「『守ってあげたい』をプレゼントするよ。今送るから。はい、送信」
「私、誕生日が近いんだよ」
「じゃあ誕生日プレゼントも用意しておくよ。もう曲、行ったんじゃない?」
ぽろりんと、萬田郁恵のスマホが鳴った。
「あー、来た来た」スマホをいじくりながら郁恵が言った。
「聞いてみな。案外いいものだよ」
郁恵はポーチからコードレスイヤフォンを取り出すと耳に突っ込んで再生する。
曲に合わせて首を振っている。
「じゃあ、そろそろ行きますか」言うと、ズボンやシャツを脱がせだした。
「今日は腰が痛いから女性上位でやってくれない? 聞こえている? 女性上位でー」
郁恵は曲をききながら、ふがふがと頷いた。
素っ裸になると、前戯もそこそこにいきなり騎乗位にまたがってきて挿入する。
こっちの臍のあたりに、心臓マッサージでもするみたいに手をつくと、
♪you don't have to worryのメロディに合わせて腰を動かす。
1曲終わらない内に果ててしまった。
それでも膣液でビシャビシャである。
郁恵はバスルームに行くと股間を中心にザーッとシャワーを浴びた。
戻ってくるとバスタオルを巻いただけの格好でベッドに腰掛けて、
セブン限定タピオカミルクティーを飲みながらリラックスした。
ベッドに寝ていた時任は、スマホを出すと、『守ってあげたい』を再生した。
果たして今のセックスで条件付けは出来たであろうか。
じーっと郁恵の背中を見つめる。
しかし、ピクリとも反応しなかった。
これは、スマホのスピーカーだと音質が悪くてダメなのか。
それとも、やっぱり一回セックスしたぐらいじゃあ条件付け出来ないのか…。

時任は寺田町のアパートに帰ってくると、さっそく、スマホで、
浦野作治に報告した。
時任:上手くいかなかったよ。全然効果がなかった。
浦野:ただ、こすっただけじゃあ、条件付けなんて出来ないよ。
時任:そうなの?
浦野:そうだよ。
パブロフの犬だって、ベルが鳴ってから肉が出るというのを繰り返すと
ベルが鳴っただけでヨダレが出る、という訳でもないんだよ。
ベルがなって肉が出るというのにビックリして、
ビックリするとシナプスの形状が変わるから、それで記憶になるんだよ。
これをシナプスの可塑性というが。
シナプスの形状が変わって、それで流れる脳内化学物質の質と量が変わる、
それが記憶の正体だよ。
だから、シナプスの形状を変化させないと。
それにはビックリする事が大切だから、ビックリしやすい状態、
つまりシナプスが変形しやすい状態にしておかないと。
それは、脳内化学物質が潤沢に分泌されている様な状態だから、
何かドーパミンの出るものを与えておくと条件付けしやすいんだがなあ。
ニコチンとかカフェインとか。
ニコチンとカフェインを大量に与えて、シナプスの先っぽに
脳内化学物質が大量に分泌されている状態で条件付けをすれば、
ユーミンと潮吹きは結びつくかも知れないのだがねえ。
時任:じゃあやってみる。

翌日の午後、時任は又郁恵を誘い出した。
何時ものホテルの『レッドサン』という部屋。
1メートルぐらいの日の丸の様な赤い間接照明の下に、
これまた赤い丸いベッドが置いてある。
いきなり脱がせないで、ベッドに寝転ぶと、
時任はレジ袋の中からパッケージを取り出した。
それを開けると、アイコスのポケットチャージャーが出てくる。
「なに、それ」と郁恵。
「電子タバコ。高かったんだから」
「いくら?」
「5000円」
時任は、ポケットチャージャーからホルダーを取り出すと、
そこにアイコス専用タバコステックを差し込んだ。
「吸ってみる?」
「えー」
「これだったらそんなに害はないしし、すっごく感度がよくなるから」
「本当に?」
ホルダーが振動すると、ライトが点滅するまで長押しした。
ライトが2回点灯したので、もう吸える状態。
「ほら、吸ってみな」と郁恵の方に差し出す。
郁恵は受け取ると両手で持って、口にくわえると、
シンナーでも吸う様に吸った。
「すーーーはーーーー。キター、クラクラするわ」
「あとこれも」とレジ袋からモンスターエナジーを取り出すと
リングプルを開けた。
「それも飲むの?」
「カフェインも感度がよくなるんだよ」言うと
口元に持っていってごくごくと飲ませる。
「あー、オレンジ味かあ。いやー、いきなりドキドキしてきた」
今や郁恵は、左手にモンスターオレンジ、右手にアイコスを持ちながら、
交互に飲んでいる。
「ああ、目が回って気持ちいいわあ」
「どんな感じ?」
「低気圧が迫っていて自律神経失調症になって、
動悸息切れがする様な気持ちよさ」
「それじゃあその状態で、ユーミンを聞いてみな」
言われるばままにイヤフォンを装着すると、ユーミンを聞き出す。
そしてベッドに横になると、白目をむいて 上目遣いで目を潤ませた。
時任は郁恵を脱がせる。
約5分のセックス。
セックスの後、郁恵は何時もの様にシャワーで膣液を洗い流して、
戻ってくるとバスタオルを巻いた状態でベッドでごろごろした。
「今日は体力消耗したわ」
「ほんま?」
横目で郁恵の様子を見ながら時任はスマホのスピーカーでユーミンを再生してみた。
「♪you don't have to worry worry まもってあげたい〜」と
チープのスピーカーのせいか、ユーミンの声質なのか、乾いた音が響いてくる。
「ん?」と郁恵は眉間にシワを寄せる。「あ、バスタオルが濡れるかも」
「え、本当?」
「なんか、まだ感じているのかなあ」
「本当かよ」

寺田町のアパートに帰ると、さっそく、浦野作治に報告した。
時任:今日は効果があった。ユーミンの曲で、湿らせる事に成功しました。
浦野:本当か。それは大躍進だな。
時任:なにしろ、アイコスとモンスターエナジーでバッチリ刺激しましたからね。
浦野:ニコチンとカフェインで、
相当、シナプスの間に脳内化学物質が出ていると思われる。
ここで止めをさすには、シナプスのつなぎめに持続的に大量の
脳内化学物質が漂う様にする為に、
セロトニン再取り込みを阻害する薬品=向精神薬を飲ませるという事だが。
時任:林田式では向精神薬とか使わないからなあ。
浦野:だったら、君、バイクで彼女が吐いたと言っていたなあ。
だったら、バイクに乗る為に酔い止めだといって、
アネロンとかトラベルミンとかの市販薬を飲ませてみろ。
それらには、ジフェンヒドラミンを含むので、
セロトニンの再取り込みを阻害するから。

翌日、又又誘い出すと例のラブホに行った。
『ネスト』という名前の部屋で、
壁全体にビーバーの巣の様に木が積んであって、ベッドも木目調だった。
ベッドにごろりとなって肩など抱きながら時任は言った。
「今日、バイクでツーリングしようか」
「嫌だぁ。又酔っちゃうから」
「だから今の内に酔い止めを飲んでおけよ」
アネロンを取り出すと通常1回1カプセルのところを3カプセルも飲ませる。
「じゃあ、折角、ビデオもある事だから映画でも見てみるか」と時任。
壁面には50インチ程度の大画面テレビが備え付けられていた。
リモコンでVODを選択して映画を選ぶ。
「何を見るかなぁ。ユーミンづくしで『守ってあげたい』を見るか。
薬師丸ひろ子の」
「何時の映画?」
「わからん」
「そんなに古いのあるの?」
「『守ってあげたい』はないなあ。
原田知世の『時をかける少女』ならあるけど。
まあ似た様なものだからこっちでもいいか。
『守ってあげたい』はツタヤで借りてきて君んちのでっかい液晶画面で見よう」
二人は『時をかける少女』をしばし観賞。
「なんでこの映画、さっきから同じシーンが繰り返し流れるの?」と郁恵。
「何をボケた事言っているんだよ。時をかけているんじゃないか」
「あー、そうなの。あー、なんか退屈。ふあぁ〜〜」と大きなあくびをした。
そろそろ薬が効いてきたか。
それに退屈だったらそろそろいいか、と思って、時任は脱がせにかかった。
そしてセックスに移行する。
が、その前に、
「そうだ、ユーミンを聞かないと。
イヤフォンを出して『守ってあげたい』を再生して」
「なんで何時もあの曲を再生しないといけない訳?」
「そりゃあ、好きにならなくちゃ。八王子市民なんだから」
「私なんて大塚だからほとんど日野市民なんだけれどもなぁ。まあいいけど」
郁恵はイヤフォンを出すと耳に突っ込んで再生した。
そして約5分のセックス。
コイタスの後、例によってシャワーを浴びると、
バスタオルを巻いてベッドに戻ってくる。
まだあくびを噛み殺していた。
時任は、じろりと横目で観察しながら、スマホでユーミンを再生した。
♪you don't have to worry worry まもってあげたい〜
「う、やばい、何故か漏れてくる」と郁恵が尻を浮かせた。
「本当かよ」
「やばい、やばい、まだ感じているのかなあ」
時任は内心ガッツポーズで、スマホを掴んだ。

ホテルから出てくると時任は言った。
「じゃあ、折角酔い止めも飲んだことだし、天気もいいので、
ひとっぱしりしてくるか」
バイクに跨るがると、いざ出発。ブゥーーーン。
ホテルのある中町から16号線に出る。万町のマックの角を右折して、
八王子実践高校を通り過ぎるとすぐに富士森公園が見えてきた。
「あそこで一休みしよう」
富士森公園の駐輪場に止めると、二人は陸上競技場に入っていった。
芝生の観客席に座り込むと、後ろ手に手をついた。
都立高校の生徒が陸上競技をやっている。
屋外用ポール式太陽電池時計を見ると、1時59分。十数秒後、2時になった。
例の放送が、マイクが近いせいで、大音響で響いてくる。
♪you don't have to worry worryのメロディが木琴で流れる。
「あれ? 芝生が湿っていない?」言うと郁恵は尻をうかして
芝生と自分の尻を触る。「違う。自分が湿ってきたんだー。なんで〜?」
(キターーーーーー!!)時任は心の中で正拳三段突きをする。

翌日、金曜日、親が居ないというんで、大塚の萬田郁恵の家に行った。
ツタヤで『ねらわれた学園』を借りて持っていく。
郁恵の家は、如何にも田舎の豪邸といった感じのお寺の様な家だった。
二階の彼女の部屋は、欄間に龍の彫刻がある十畳の和室で、
ピアノ、オーディオセット、ベッド、ソファ、50インチの液晶テレビ、
壁一面に漫画とノベルスが並んでいた。
(こういうのもみんな店子から巻き上げた銭で買ったんだろう)と時任は思う。
「じゃあ、DVDを借りてきたから見ようか」
言うと時任はソファにふんぞり返った。
郁恵がDVDをセットするとすぐに再生が開始される。
まずは、写真とアニメの合成の、宇宙のビッグバンの様な映像が流れる。
続いて、スタッフクレジットが流れるオープニングでいきなり
『守ってあげたい』が流れた。
♪you don't have to worry worry…
「うっ」と小さく唸ると、郁恵はぎゅーっと股を締めた。
「うっ。ちょっとトイレ行ってくる」言うと、障子を開けて出て行ってしまった。
(もう完璧だ)と時任は思う。(完成したよ)。

しばらくすると、なんと郁恵は安芸亜希子と一緒に戻ってきた。
「あれ、亜希子さん、家に来たりする間柄なの?」
「そうよ」
「ちょっとちょっと」と郁恵に引っ張られて、
二人は部屋の隅の勉強机の所に行くと、何やらひそひそ話しを始めた。
「実はね、ヒソヒソ、ヒソヒソ…」
(何を話しているんだろう。
まさか、セックスの時にユーミンを聞かされていたら、
♪you don't have to worry と聞くだけで潮を吹くようになった、
とでも言っているのでは。
しかし、既に条件付けは完了しているので、今更何を言おうと。無問題)。

その日の晩、浦野作治はチャットには居らず、時任は一方的に報告をタイプした。
時任:条件付けはバッチリですね。
何時でも、ユーミンの曲が流れてくれば濡れる様になりましたよ。
富士森公園の放送であろうと、映画の挿入歌であろうとね。
あとは場所を危険なところに移してあのメロディーを聴かせるだけ。
そうすると何が起こるか。
潮吹きだけじゃあ滑落しないと思ったから、僕は特別な仕掛けを考えましたよ。
へへへ。どんなお仕置きをするかは乞うご期待ですね。
又リポートしますよ。へへへ。




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 続き #564 条件反射殺人事件【6】
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