AWC 条件反射殺人事件【3】


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#561/569 ●長編    *** コメント #560 ***
★タイトル (sab     )  20/11/03  17:21  ( 70)
条件反射殺人事件【3】
★内容                                         20/11/07 17:42 修正 第2版
次の一週間は、時任は夜勤があった為に、萬田郁恵に会う事は叶わなかった。

待ちに待った土曜日、時任は、労政会館の創造会に行った。
前半は何時もの様に、自分の症状を自己紹介風に語り、来週の目標を語る、
というコーナー。
休憩時間になると、萬田郁恵がおやつの準備を手伝っていたので、
時任もいそいそと手伝った。
萬田郁恵と臨床心理士の佐伯海里が、紙の皿に、ブルボンホワイトロリータ、
ハッピーターンを盛り付ける。
時任は、ドリンクの三ツ矢サイダーを紙コップに注いでいった。
「うえー」と郁恵がえずく。「このニオイ大嫌い。時任君平気? 
私、このニオイ大っ嫌いになったのよ」
「え、何で?」
「ほら、このラムネのニオイがメントスみたいな感じがしない? 
先週焼肉屋の帰りに焼肉とメントスを吐いたんです。そうしたら
ミント系のニオイが大嫌いになりました。歯磨き粉もダメになったんです」と、
佐伯海里に言った。
「それはガルシア効果だわね」
「はぁ?」
「ガルシア効果といって、カレーを食べて乗り物酔いをすると
カレーのニオイをかいだだけで吐き気がするようになっちゃう
という様な条件付けね。パブロフの犬みたいな」
「へー」
「普通の条件付けは一回では出来ないんだけれども。
パブロフの犬だって何回も肉とブザーで条件付けをして、
条件反射が出来たんだけれども。
でも、ガルシア効果だけは一発で条件付けられるのよ。
あと、音や光だとトリガーにはならなくて、味覚情報じゃないとダメなの」
「でも、僕はサイダーを飲んでもなんともないけど」と時任は一口飲んだ。
「人によりけりなんじゃないかしら。
不潔恐怖症の人は連鎖しやすいのかも知れない」

窓の外からユーミンの「守ってあげたい」が流れてきた。
「二時かあ」
「来週は、みんなで高尾山だよ」と書痙オヤジが言ってきた。
「毎年晩秋になると、八王子の創造会では、リクレーションで
高尾山に行くんだよ。
行きはケーブルカーで行って、山頂で昼ご飯。帰りは4号路を下ってくるから、
ちょうどこの放送が聞こえるのは吊り橋を渡っている頃かなあ」
「萬田さんも行くの?」と時任。
「みんな行くのよ。海里先生も」
「僕も行こうかなあ」
「当たり前じゃない。これも“ありのまま”の“恐怖突撃”の一種なんだから」

休憩時間の後は四つのグループに分かれての話し合いが行われた。
今日は時任は萬田郁恵と一緒のグループになれた。
ブルボンのお菓子を三ツ矢サイダーで流し込みながら萬田郁恵の悩みを聞く。
「私の父は大塚の田んぼ屋なんですけれども。
多摩モノレールが通った時に、地上げにあって、すごい大金を得たんです。
それはいいんですけれども。
多摩モノレールの下に通りが出来て、
その左右にアパートを建てて大家になっているんですけれども、
アパートの管理なんて不動産屋に任せればいいのに、
草刈りとかゴミ出しの後の掃除とか、父がやっていて。
それで、ゴミ捨て場に指定の袋に入っていないゴミがあると、
市の収集車は持って行ってくれないんですけれども、
それをカラスが荒らすといって、父が家に持ってくるんですね。
それで、ハエやゴキブリが出て。
それが不潔恐怖症の私の悩みなんです」
時任は、聞いていて、ばりばりばりーっと心にヒビが入るのが分かった。
殺意さえ感じる。
スマホニュースのガジェット通信やzakzakで
IT長者の話題を目にした時に感じる殺意だった。

会が終わって、労政会館から出てきたところで、時任は
「今日は帰る」と宣言した。
「えー、今日はお好み焼き屋に行くんだよ」と萬田郁恵。
「昨日まで夜勤で昼夜逆転しているから眠いんだ。帰るよ」
言うとそそくさと一人で駐輪場に向かった。
アドレス110に跨ると一人で寺田町のアパートに向かった。




元文書 #560 条件反射殺人事件【2】
 続き #562 条件反射殺人事件【4】
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