#531/598 ●長編 *** コメント #530 ***
★タイトル (sab ) 19/02/15 20:12 ( 42)
「心臓が止まっても死なない男」四 朝霧三郎
★内容
四
我々は、それだけの情報をもってマンションに帰ると
又温泉につかって濡れたタオルを頭に乗せた。
「まず、動機というかホワイダニットについての整理やな」
「それはまず、女四人をもっていかれたので劇場関係者から恨みをかっていた
ということですね。それが証拠に加藤らにも偽装結婚を進めていた。
しかしそれが上手く行かないんでその筋の人から脅かされていたかも知れない。
落とし前をつけろなどと。
もう一つは、撃ったのかカミールらしいということですね。
しかも牛山さんがカミールに入れ込んでいたという。
以上の二つがホワイダニットになるんでしょうか。
それからハウダニットですが、これは医者じゃないと分からないんでしょうか」
「まずは、銃弾の偽装だな。加藤らへの偽装結婚も上手く進まないので、
落とし前をつけなければならないが、勿論死にたくない。
そこで熊の死骸に弾を打ち込んで取り出して、元々あった呼吸器科の傷に入れる」
「どういう病気だったんですか?」
「それは不明だが、カミールに空砲を撃たせて、
弾に当たった様に偽装したんじゃないの?」
「しかしそんな偽装、医師に見抜かれないですかね」
「新米の研修医なら見逃すかも知れへんな。
それに、それが死因な訳ではないんやから、
仮にバレても、トンヅラしちゃえばいい訳だから、
意外と一か八かでやれるかもしれないで」
「次にコールドスリープですが」
「まず、牛山の妹が血液マニアで血液交換などに興味があった、
というのが前提になるな。
そして彼女と斉木が
冬眠から覚めてきた熊の様にコールドスリープ云々話していたという事。
あと、あの寒い病室や」
「でも、仮にコールドスリープ状態になったとしても
心肺停止状態にはならないんですよね。
斉木は検死の結果死亡が確認されているんですよ」
「うーん」
中川は湯船から出ると、屋外の露天風呂に行った。
そこには小さい池があって金魚が泳いたのだが、
この零下だから池の水が凍っていて金魚も一緒に凍っていた。
「佐山さん、きてみな」と中川が呼んだ。
私が行ってみると、中川は露天の湯を手ですくってきて、金魚にかけた。
すると、金魚はなんと泳ぎだしたのだった。
「これをやったんや」
「そんな事が出来るんですか?」