AWC 「長野飯山殺人事件」5 朝霧三郎


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#527/555 ●長編    *** コメント #526 ***
★タイトル (sab     )  19/02/15  20:09  (106)
「長野飯山殺人事件」5 朝霧三郎
★内容                                         19/02/15 21:20 修正 第2版
5

 駐車場に行くとレガシィに乗り込む。
車内でも息が白かった。
 カミールに電話すると英語で話した。
「もしもし、サイキ。分かる?」
「もちろん」
「今日、会いたいのだけれども。偽装結婚のことで。大丈夫?」
「大丈夫」
「じゃあ十時頃、飯山のファミレスの駐車場で待っている。
俺の車は知っているだろう。白のレガシィ」
「わかった」

 二十分後、ガストの駐車場についた。
 フロントガラスごしに空を見上げると、異様に晴れていた。
今日は何か起こるんじゃないのか。
 拳銃をジャケットのポケットに入れると、車を降りた。
 ガストの軒下に、カミールがPコートに両手を突っ込んで立っていた。
 あのファー襟に厚底ブーツでなくてよかった、と思った。
 雪の照りっ返しで、カミールの顔は白く見える。
 カミールを促して、一緒に店に入ると窓際の席に付いた。
 カミールはハンバーガーにオレンジジュース、
俺は目玉焼き&ベーコン朝定食を注文した。
 料理がくるまえにさっそく俺は切り出した。
「夕べ、俺の知り合いにフィリピンの女の写真を見せたんだけれど。
そしてそいつらの写真をメールで送ったんだけれども。
向こうの女、なにか言っていた?」
「あんなこ汚い新聞配達員じゃあ無理だよ。女の子はみんな若いんだから。
それに、偽装結婚は私の借金を返す為にやる積りだったのに。
あんたがしくじって逮捕された女達の穴埋めをする為じゃない」
「そっちが乗せてくれって言ってきたんだろう」
「とにかく無理、無理。あんなジャパニーズじゃあネバーポッシブル」
 無理無理と繰り返されると無理に思えてくる。
ユーチューバーになろうとか、fxで儲けようとか、
ミステリーの新人賞に応募しようとか、誰かに無理と言われると無理に思えてくる。
 偽装結婚も無理だし、それに面倒くさく思えてきた。
 トンヅラした方が早いんじゃないのか。牛山の保険金をもって。
 料理が運ばれてくると、カミールはさっそくハンバーガーを頬張った。
見ていて、若いな、と思った。
こんな若い女が本当に牛山を愛しているのだろうか。
スマホを渡したり、送金したりしてやっているから、利用されているだけだろう。
俺は聞いた。「カミール。牛山は客か? それとも恋人?」
「恋人だよ」
「うそー。だってあいつは金をはらって個室に並んでいた男だぞ」
「それはあなたも同じ」と言うとジッとこちらを見据える。
 なんでここで俺を攻めてくるんだろうと、一瞬顔が引きつった。
でもまあいいや。俺は声を潜めていった。
「牛山は、タバコが好きでしょう。だから胸が悪い。後で死ぬかも知れない。
そうしたら、保険金が入るでしょう。彼はそれをあなたにプレゼントしたい。
でも、日本人がいないとお金持って帰れないでしょう。どうする?」
「あなた助ける」
「どうして? 俺、ただのお客さんでしょ?」
「友達でしょ」
「友達だからって、助けるとは限らない。
その前に俺には問題があるし。お前のボスに脅かされていて、
女を入れないと死なないとならない。こんなものを押し付けられた」
 テーブルの下で、拳銃をポケットか出して、見せる。
「はーっ」と息を呑む。「ちょっと見せて」
 さっと手を伸ばすとひったくった。
「おいおい」
「これ、カルロが持っていたものだ」
「カルロって?」
「マネージャー。私が持っていてあげる。故郷で撃った事もあるし」
「故郷に帰ろうよ。牛山の金でマネージャーに借金を返して。
俺もカルロに脅かされているから、一緒に逃げたい。どう?」
「うーん」と唸って前かがみになる。胸の谷間が見える。
「この話しの続きはホテルでしようか」
「一発撃たせてくれたら、行ってもいい」
「オッケイ、オッケー」

 ファミレスを出ると、カミールをレガシィに乗っけて、中野町方向に走った。
 新幹線の高架の下で河川敷の方に向かう道に車を入れて止める
 そして、昨日捨てた熊の死骸のところへ行った。
「ここに撃てよ」
 カミールは構えた。
「ちょっと待って。一応、電車が来たら撃て」
 やがて、新幹線が、シューーーーーと擦れる様な音をたてて通過した。
「撃て」と俺は言った。

 船の形をした石庭グループのホテルに入ると、
自動販売機で部屋を選んで鍵を出す。
部屋に入ると「冷えた体を温めたい」とカミーラが言った。
 俺は冷蔵庫の上にあったティーバッグで紅茶を入れてやった。
「はい、tea。でも、アルファベットじゃないけれども、
俺は、T(tea)よりU(you)の方が好きだよ」
「でも、IよりHが先だと順番が逆ね」
 俺は黙って服を脱いだ脱いだ。
 カミールは寄ってくると、下着を下ろしてあそこを見た。
「なに、この絆創膏、血がにじみ出ている」
「それは、伝染る病気じゃないから」
「でも、やる前にシャワー浴びないと」
「オッケーオッケー」
 俺はシャワーで絆創膏のべたべたをとった。多少出血した。
 出てくると一発やった。

 事が終わる、そそくさと部屋を後にした。
 二人してエレベーターでフロントに降りてくる。
 そして出口に向かったのだが、突然カミールが消えた。
 あれー、どこに行ったんだ、俺はキョロキョロした。
背後を見ると、カミールが拳銃を構えていた。
「なにしている」
「サエキ、撃つよ」
「やめろぉ」
 しかしそのままズドンと銃声が鳴った。
 身をよじると胸からどくどくと血が流れ出した。
 俺はその場に倒れ込んだ。入り口のドアのガラス越しに妙に晴れた青空が見えた。




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 続き #528 「長野飯山殺人事件」一 朝霧三郎
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