AWC そばにいるだけで 67−6   寺嶋公香


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#520/554 ●長編    *** コメント #519 ***
★タイトル (AZA     )  18/12/30  01:13  (283)
そばにいるだけで 67−6   寺嶋公香
★内容                                         18/12/31 17:39 修正 第2版
「占い!」
「あっ、ごめん」
 相羽と結城も急いで反転。占いショップの前でたたずむ淡島の元へ駆け付けた。
「せーっかく、お二人の仲を占ってもらう分、おごろうと考えていましたのに」
 淡島がどよんとした目で見上げてくる。
「えっと、このタイミングでそう言われても」
 相羽と純子は共に戸惑いを表情に出した。淡島の機嫌を直してもらうには、おごって
くださいと言うべきなのだろうか。何か変だ。
 相羽は両手を拝み合わせ、淡島に頭を下げた。
「淡島さん、本当にごめん。マジックのライブが久しぶりで、僕もつい夢中になってし
まって。次からは気を付けて、こんなことないようにする。だめかな?」
「……よろしいです。ちょっと意地悪を言いたくなっただけですから、ご安心を」
 淡島が笑顔を見せたので、相羽も純子も結城もほっとした。
「ただ、お二人が占ってもらうところを、同席してみたい。私独自のやり方の参考にな
るかもしれません」
「え。そういうのは、占い師さんに頼んでみないと分からないんじゃあ……」
 店の前で揉めていてもしょうがない。思い切って入ってみることに。店内は占いグッ
ズが所狭しとディスプレイされていた。が、淡島は目もくれない。
「時間がどのくらい掛かるか分からないから、すぐさま観てもらいましょう」
 淡島に手を引かれ、奥の占いスペースらしきコーナーへと連れて行かれる純子。相羽
も仕方なしに着いていき、その後ろを結城が面白がって押す。
 ゲルを思わせるそのコーナーの出入り口には、占い師の名札『小早川和水』が掛かっ
ており、天幕からの布が目隠しになっている。先客はいないようなので、布を持ち上げ
て中の人に声を掛けてみることにした。淡島と純子で声を揃える。
「すみません、占ってほしいのですが……」
「どうぞ、お待ちしておりました」
 存外、軽い調子の返事があった。幾分緊張していたのが和らいで、入りやすくなる。
 壁際の椅子に腰掛けていたのは、浅黒い肌の女性で、太い眉毛が印象的な人だった。
どことなく南国かインド辺りを連想させる。髪はショートカット、衣服は水色のワン
ピースで、いかにも占い師といった風ではない。客の椅子との間には白いテーブルがあ
り、紫のクッションの上にやや大きめの水晶玉が一つ鎮座している。他にも何やら標本
サイズの鉱物がたくさんある。
 椅子を勧められたが、先に伝えねばならないことがある。淡島が暗いジャングルを手
探りで行くような口ぶりで聞いた。
「変なことを言うかもしれないですが、あのう、一度に四人が入っても、大丈夫でしょ
うか……」
「他の人に占いを聞かれてもいいの? だったらかまわない」
 これまた思いのほかフレンドリーだ。虚仮威しタイプよりはずっといいが、こうも親
しげだと占いの重みやありがたみが薄れそうな気もする。
「初めての方ね? 初回特別割引で、学生さんならこういう具合になってるけれども、
いいかしら」
 料金表を示し、ビジネスライクなことまで言ってきた。とにもかくにも、普通の高校
生でも楽に手が届く設定はありがたい。
「お願いします。ただ、とりあえず、観ていただきたいのは二人なんです」
 ここからは純子が話す。相羽との仲を観て欲しいと伝えた。淡島に半ば強制されたこ
とは言わないでおく。
「珍しい。普通は隠したがるものでしょうに。いけない、関係のない詮索はやめないと
ね。れじゃ、二人に前に座ってもらって、付き添いの友達は後ろで……そこのパイプ椅
子を出して置けるようなら、座って」
 相羽が率先して椅子を置いていく。幸い、椅子を二列ならべてもまだ余裕はあった。
「それでは改めて……私の名前は小早川和水(こばやかわなごみ)と言います。ご覧の
通り、水晶占いにジュエリー占いを組み合わせて観させていただきます。他にも姓名判
断とタロットが使えますが、水晶でかまわないかしら」
「は、はあ。お任せします」
 純子が受け答えする横で、相羽は口をつぐみ、占いの道具の数々をぼんやり眼で見て
いる。興味がない訳ではなく、平静を装っているようだった。
「じゃあ、最初にイメージを掴むためにお名前を教えて欲しいの。姓名判断ではなく、
飽くまでイメージを把握するため。それから誕生石を知る必要があるので、誕生月もお
願いね」
 便箋と鉛筆を滑らせるようにして、純子と相羽それぞれの前に置く。相羽がここで初
めて口を開いた。
「名前にふりがなは?」
「何て読むのかを知った方が、よりイメージしやすいわ」
「じゃあ書きます」
 流れに素直に従う。書き終えた便箋を向きを換えて渡すと、小早川は何も言わずに石
を選んだ。五月の代表的な誕生石エメラルドと十月の代表的な誕生石オパール。どちら
も極小さな物で、シートに固定されている。他に参考ということだろうか、翡翠、トル
マリン、ローズクォーツとメモ書きするのが見て取れた。
「最初に言っておくと、このあとの占いで示される見立ては、今の時点でのものだか
ら。どんなにいい結果が出ようと心掛けや行い次第で、悪い方に変化し得るし、逆もし
かり。そのことを忘れないでね」
 二人がはいと答えると、小早川は便箋を返した。個人情報の処理はお客に任せる方針
らしい。
「それではお聞きしますが、お二人の何を観てみましょうか?」
「えっと」
 改まって尋ねられると、具体的には決めていなかったと気付く。かといって、淡島に
判断を仰ぐのもおかしな話だし。
「見たところ――これは占いではなく、私の直感だけれど――見たところ、現状で充分
幸せそうよ。120パーセント満足とまでは行かないにしても、大きな不安や悩みなん
てあるようには思えないわ」
「……小さな不満なら」
 純子が小さな声で言った。占い師の「聞かせて」という促しに応じて続ける。
「会える時間が少ないんです。一緒の学校、一緒のクラスなのに。でもこれは原因がは
っきりしてるからいいんです。一時的なことのはずだし」
「少し、はっきりさせてみましょうか。悩みは過去にあるのか未来にあるのか、それと
も現在なのか」
「未来、かな……この先ずっと、こんな調子だと嬉しくないなって」
 相羽の様子を横目で窺った。相羽の口が、そうかと声のない呟きの形に動いたように
見えた。
「彼氏さん、えっと相羽君の方は何かある?」
「悩み相談室みたいですね。ええ、今の状況に幸せを感じてはいます。だからこそと言
うべきなのか分かりませんが、将来に対する不安はあります」
 ほぼ同じことを言ってるようでいて、ニュアンスの微妙な違いがあるようなないよう
な。その空気を感じ取れたのか、小早川は具体的な提案をした。
「とりあえずというのもおかしいけれど、二人の将来を観てみよう。ね? 今の状態が
いつまで続くのかとか、よい方に向いているのかとか。結ばれるかどうかまでは言えな
いけれど、相性診断も併せて」
 その線でお願いすることに決めた。
 小早川和水は集中するためにと前置きして、占いコーナー内の明かりを若干落とし
た。ほの暗くなった空間で、水晶玉に手をかざす。その手には、エメラルドかオパー
ル、どちらかの誕生石が握り込まれているようだった。
「――今現在の姿から、将来への像を辿って描きます――今現在の涼原さんは全力疾走
しているイメージ。それも多方面に。水晶玉にあなたの誕生石をかざすと、色々な方向
に電気のようなものが走るから。そのことがさっき言っていた原因? あ、答えなくて
いい。……うん。ときが来れば止まる。そのとき、一緒にいてくれる人が」
 小早川は石を取り替えたようだ。ほとんど間を置かずに、首を縦に小さく振る仕種を
した。そして次に、首を傾げる動作もあった。
「そのとき一緒にいてくれる人が、相羽君なのは間違いない。ただ、それまでに……」
 言い掛けてやめる占い師。純子は何があるのかと反射的に聞き返そうとした。が、そ
のタイミングで相羽が手を握ってきた。おかげで口出しはせずに、占いは続くことに。
「もう少し待っててね。ここは慎重に、段取りを踏んで、彼氏さんの今現在の姿も思い
描くから」
 小早川がそう言って、石――多分エメラルドの方を水晶玉にかざす。その様を見てい
る内に、水晶玉の内部を本当に電光が走ったように思えた。
「うん。ちょっと不思議かな」
 どういう意味ですかと聞き返してしまいそうなのを堪え、続きの言葉を待つ純子。相
羽の手を握り返す手に力が入った。
「相羽君の方は今、岐路に立っているか、通り過ぎたばかり。本人が自覚しているして
いないにかかわらず、そういう地点にいるっていう意味」
「あの、よろしいでしょうか」
 意外なことに、相羽が口を挟んだ。隣の純子も、後ろの二人も少なからず驚いて、は
っとする気配が伝染する。小早川も一瞬むっとしたようだが、すぐに如才ない笑みを浮
かべた。
「何か?」
「高校生はそろそろ進路を決める時期だからってことで、当て推量で言ってるのではあ
りませんか?」
「うーん、私がそういう計算を無意識の内にしているのかもしれないけれども、その辺
りも全てひっくるめての占いよ。これでいい?」
「分かりました。失礼をしました」
「じゃあ、続きを――相羽君が行くであろう道は、彼女さんの道とは交わらないか、大
きくぐるっと回ってきてようやくつながる、みたいなイメージを持った。つながったと
きというかつながったあとは涼原さんとずっと一緒になる、そんな感じよ。今ね、二人
の石を同時にかざしているのだけれど、別ちがたい結び付きがあるのが伝わってくる。
それを思うと、道が交わらない時期があるのが逆に不思議。一時的な物とは言え、これ
だけ相反するものが見えたということは、心掛け次第では大きく変化してしまうことも
ないとは言い切れない……」
 明かるさが徐々に戻っていく。どうやら占いは済んだようだ。
「あのー、結局どういう……」
 終わったのなら聞いてもいいだろうと、純子は尋ねた。
「今のあんまり会えない原因が、まだしばらく続くか、拡大するという解釈になるんで
しょうか」
「少し違うと思う。見た目の原因は変わりがないとしても、間接的に相羽君の選択が関
係してるんじゃないかっていう見立てよ」
「そうですか」
 多少の不安を抱えて、相羽の顔を見る純子。相羽も見つめ返していた。
「まあ、驚かせるようなことを最後に付け加えたのは、二人に緊張感を保って欲しいか
らよ。何があってもどうせ一緒になれるんだからと思い込んで、いい加減な行動を取っ
て、それが原因で不仲になったりしたら、私が恨まれてしまう。実際、似たようなこと
で怒鳴り込まれた先輩を知っているし」
 占い師としての実情をぶっちゃける小早川。神秘性はあまりないけれども、親しみを
覚える人柄に、純子は少なからず好感を持った。
「さあて、知りたいことは他にない? あっと申し訳ない、先にお代をいただいておか
なくては」
 そう言われて、相羽が真っ先に動いた。
「ここは僕が」
 皆まで言わない内に支払いを済ませる。それどころか、ずっと見物していた結城と淡
島に向き直り、「何かあるのなら、僕が出すから観てもらいなよ」と誘った。
「ありがたい話だけれども、私は相談を友達に聞かれたくないわ〜」
 結城が冗談交じりに言うのへ、被せるようにして「僕らは出ているから」と後押しの
言葉をつなぐ。
(相羽君が占いのことでこんないい風に言うなんて珍しい。小早川和水さんを相羽君も
気に入ったのかしら)
 結局、淡島も結城も相羽のおごりで観てもらうことになった。先に座った結城は、外
に聞こえるほどの音量で「彼氏がいつになったらできるのか、知りたいです!」と言っ
ていた。

 帰りは当初の予定よりは遅くなったものの、ちょっとしたずれの範囲内で、明るい内
に最寄り駅まで戻れた。
 結城や淡島とはすでに駅で分かれており、ここから自転車に乗っての帰路は相羽と二
人きり。
「あーあ、楽しかった。ちょっぴり無理をした甲斐があったわ」
「やっぱり、無理をしてたんだ?」
 結城達がいなくなったところで気抜けしたのだろう、つい実情を漏らしてしまった。
相羽にはしっかり聞き咎められたが、もしかすると純子自身も心の奥底では誰かにねぎ
らって欲しいと願っていたのかも。
「そんなに、無理って言うほどの無理じゃないわ」
「隠さなくても。実は、おおよそのところは、母さんから聞いて知ってるんだけど」
「そ、そうだったの。だから誘ったときに、簡単にOKしてくれたのね」
「心配して欲しかった? 仕事がないときは休めって」
「うう。かもしれない。でもいいんだ」
 自転車ではなく徒歩だったら、相羽の方を振り返ってほころぶような笑顔を見せてい
ただろう。
「今日は休んだ以上に充実してたもん。寄ったところは三つとも好みに合って。プラネ
タリウムは内容が入れ替わるまではいいけど、マジックはどうなのかしら? ショーの
内容は同じ?」
「基本となる部分は同じで、あとは客に合わせて変えてくると思うよ。僕らのこと覚え
てくれただろうから、なるべく違う演目になるはず」
「じゃあ、近い内にまた行ってみない? 今度はその、二人で」
「……」
「な、何で黙るの!」
 恥ずかしさから声が大きくなる。相羽が急いで返事を寄越した。
「随分、積極的だなと思って、びっくりした」
「それだけよかったってこと! ……それに、占い師さんにああいう風に言われて、少
し気になったから」
 駅から自宅まである程度行くと、あまり信号がなく、あっても青だったため停まらず
に来られた。が、ここで十字路に差し掛かり、一旦停止した。
「相羽君も気になったでしょ?」
「そう、だね」
 相羽の区切った言い方に引っ掛かりを覚えた純子だが、疑問を言葉にする前に、自転
車を漕ぎ出す。比較的狭い路地に入るため、一列になった。純子は後ろに着いた。
「小早川さんの言っていた岐路って、当たってたんじゃあ?」
 思い切って聞いてみた。相羽の背中から反応が来るまで、ちょっと長く感じた。
「どうしてそう思うの?」
「学校で先生のところによく行ってるでしょ、相羽君。面談の話だけにしてはいつまで
も掛かっているし。やっぱり進路の相談なのかなあと思って」
「なるほど。……純子ちゃん、次に時間が取れる日っていつになる?」
「え? それは分からないけれども、当分無理かなぁ。今日の休みを確保するために、
あとのスケジュールにもしわ寄せが行ったみたいだから」
「そっか、そりゃそうだよね」
 相羽が額に手を当てて、考える姿勢になるのが分かった。そのポーズがしばらく続く
ものだから、「前、ちゃんと見てる? 危ない」と声を張る。
 実際には周囲がまだ明るさを残しているおかげもあって、危ない目に遭うことも遭わ
せることもなく、純子の自宅前まで着いた。
「結局、何だったの? 時間が取れる日って……」
 自転車を降りて門扉の手前まで押して立ち止まり、振り返って尋ねた純子。
「気にしないで。僕の方で何とかする。じゃあ急ぐからこれで」
「? う、うん。分かった。気を付けてね」
 違和感を払拭するためにも、手を強く振って彼を見送った純子。だが、何となく居心
地の悪いものが残った。

            *             *

「母さん、純子ちゃんのスケジュールで一日だけでも完全な休みを作れない?」
 マンションの自宅に帰り着くなり、相羽は母に言った。
 キッチンに立っていた相羽の母は、短い戸惑いのあと、眉根を微かに寄せた。難しそ
うだと見て取った相羽は、答を聞く前に言葉を重ねる。
「無理なら、一番仕事に余裕がある日を知りたい。三日間ぐらいのスパンで見た場合
に」
「……もうすぐ夕飯が完成するから、その話は食べながらにして、今は着替えてきなさ
い。うがいと手洗いもね」
 分かったと素直に動く相羽。
 今日午後から遊んだ中で、二度も暗示的な出来事があった。自分と純子との近い将来
を考えさせる出来事が。表裏一体になったカードと占い、どちらも純子に何かを勘付か
せるきっかけになっているような気がする。
(はっきり聞かれる前に、僕から言わなくちゃ)
 しかしそれにはタイミングを見定める必要がある。当初は、彼女にじっくり落ち着い
て聞いてもらえる時間と場所があれば、何とかなると思っていた。だけれども、少し考
えてみて、純子が関わっている仕事への影響も考慮せねばならないと思い直した。その
目的のために、まずは母に聞いてみたのだが。
「――それを教えても、大して差はないと思うわ」
 母の返答に、相羽は何でだよと口走った。似つかわしくない荒っぽい言葉に、母が苦
笑を浮かべる。
「信一がどんな理想的な状況を描いているのか知らないけれど、ショックを与えずに知
らせるなんて、絶対に無理だから。仕事への悪影響って言うのなら、ショックを二日も
三日も引き摺るかもしれないわ」
「それは……」
 続きが出て来ない相羽。母が意見を述べた。
「とは言ってもね。私から見た印象になるのだけど、純子ちゃんはあなたの留学を知っ
ても、多分仕事はきちんとこなすわ。最高の状態ではない、悪いなりにではあるかもし
れないけれど、責任感のある強い子だから、それくらいはやり遂げる。純子ちゃんにと
って一番影響を受けるのは、あなたがいなくなったあとの日常の方」
「そうなのかな……」
「決まっているわ。好きなんでしょう、お互いに。あなたが考えるべきは、一番ましな
伝え方をしようとか、ベストのタイミングを計ろうとかじゃなくて、離ればなれになっ
たあとの彼女のことを想って、今できる行動を起こす。これじゃないのかしらね」
「……分かるけど。難しい」
 食事の手が止まりがちになるのは、カレーライスのせいだけではない。母に促され
て、何とか再開する。
「私が純子ちゃんなら」
 その前置きに相羽が顔を起こすと、母がいたずらげな笑みを浮かべていた。
「こんな大事なこと、一刻も早く知らせてよ!ってなるかな。次は、ひょっとしたら翻
意を期待するかもしれない。そこは信一が誠意を持って受け入れてもらうしかない。そ
れから――一緒にいられる間にできる目一杯のことをしたくなるわね。信一は求められ
る以上に応えてあげて。そうして彼女に安心してもらう」
「安心」
「そう。たとえ遠くに離れていても、これからの将来ずっと一緒に歩んでいけるってい
う安心」
 おしまいという風に、箸でご飯を口に運ぶ相羽母。
「いいアドバイスをもらえた気がする」
 相羽は無意識の内に頭を掻いた。
「けどさ、純子ちゃん忙しいんでしょ? 出発する日までに、どれだけ時間を取れるの
か……」
「そこはまあ、信一が工夫して。学校にいる間を最大限活用するとか。たとえば、思い
っきりべたべたしてみるとか?」
「母さん!」
 怒ってみせた相羽だったが、次の瞬間には学校で純子とべたべたする場面を想像し
て、赤面と共に沈黙した。

――『そばにいるだけで 67』おわり
※作中に出て来た、皆既日食の起こるとされる月日は、架空のものです。過去及び未来
を通して、同じ七月下旬に皆既日食が日本で観られるケースはあるはずですし、なおか
つ本作のカレンダーと合致する年があるとしても、それは偶然であり、本作の年代を特
定する材料とはなりません。念のため。




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