AWC love fool 18 つきかげ


        
#451/598 ●長編    *** コメント #450 ***
★タイトル (CWM     )  13/11/22  00:45  ( 46)
love fool 18     つきかげ
★内容
其の四

ロミオは、ゆっくりと立ち上がる。
苦痛で少しふらついたが、体勢を整えると真っ直ぐに棺桶へと向かった。
撃ち抜かれた左肩から血が滴り、左手の先から床へと落ちていく。
闇の中に花弁を落とすように、ロミオは血の滴を床に落としジュリエットの元へと
向かう。
壇上に置かれた棺桶の傍らに、ロミオは立った。
その棺桶は、宝石のように美しい花々に満たされている。
その中に、死して尚天使のごとく美しいジュリエットがいた。
おそらく花嫁衣装のまま棺に納められたらしく、純白のドレスを纏っている。
ロミオは、その姿を見て夢見るひとのように笑みを浮かべた。
「ようやく、君の元へ」
そっとロミオは、ジュリエットに唇を重ねた。
それは、身を切り裂く冬の風のように冷たい。
それでも、ロミオは満足げな笑みを浮かべる。
「たどり着けた。もう、ここから離れたりしない」
ロミオは、ジュリエットの横に身を横たえる。
血塗れの腕で、ジュリエットを抱く。
純白のドレスに、薔薇を散らしたように血の滴が滲んだ。
ロミオは、拳銃を構える。
真っ直ぐ、空に向かって。
「ああ、今こそ撃てるよ」
ロミオは、天井を透かしてその向こうにある、宝石を散らしたような夜空を見てい
た。
ロミオの拳銃は、真っ直ぐ空に向けられる。
「残酷な朝を呼び込む明けの明星を」
ロミオは薄く目を閉じ、そっと笑みを浮かべる。
「撃ち砕くんだ」
それは、慟哭のような。
死を悼む、獣の遠吠えのような。
銃声だった。
天井に命中した銃弾は、正確に跳ね返り、ロミオの胸を貫く。
着弾の衝撃で、ロミオは吐息を漏らす。
その全身が、幾度か痙攣する。
そして、ロミオは満足げな笑みを浮かべたまま、闇へ落ちていった。
ロミオは、思う。
(今こそ、おれたちの愛は、永遠となった)
ロミオは、浮游感に飲み込まれている。
ロミオの目には、星が見えていた。
ダイヤモンドが砕かれ、散りばめられたような星々の中へと墜ちて行く。
ジュリエットと共に。
ロミオは、思う。
(明けることのないこの夜の中で、おれたちの愛は永遠になる)
ロミオは血塗れの腕でジュリエットを抱きしめると、もの凄い速さで星々の中を墜
ちて行った。




元文書 #450 love fool 17 つきかげ
 続き #452 love fool 19 つきかげ
一覧を表示する 一括で表示する

前のメッセージ 次のメッセージ 
「●長編」一覧 憑木影の作品 憑木影のホームページ
修正・削除する コメントを書く 


オプション検索 利用者登録 アドレス・ハンドル変更
TOP PAGE