●短編 #0428の修正
★タイトルと名前
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
「あ、本だ」 「お、それに目を付けたか。いい本なんだ」 「う、ほんと? かわいらしい絵柄だから言ってみただけなんだけど」 「本当さ。絵本だから、みきちゃんくらいでも読めるかな」 「絵本ぐらい当然、読めるわ。でも、ねえ、本田にいちゃん。お願いだからぁ」 「何でまた……しょうがないな。では読んでやるから、心して聞くように」 「うん」 「それでは……おほん。『うそかほんとうか』。昔々、あるところに――」 「その出だし、昔話の基本だね」 「茶々を入れない」 「だって、まんまなんだもん。言いたくもなるよ」 「賢く本音を隠すことを学ばないと、友達なくすぞ」 「――けほっ。けほけほん。ねえ、何だか煙たいよ」 「話をそらすな――こほ、こほんこほん。本当だ、煙が出てる」 「あのさ、本田にいちゃんケーキ焼いてるんじゃなかった?」 「そうだった!」 〜 〜 〜 「シホンケーキ、こへてるのにいはいとおいひい(焦げてるのに意外とおいしい)」 「ほおばりながら喋らないこと。だいたい、シホンではなく、シフォンケーキだ」 「スホン?」 「違うっ。セホンでもソホンでもなく、シフォンだ!」 「あー、分かった。本当はチホンでもツホンでもなく、セシボンなんだよね」 「……フランス語で誉められたことになるのか、今のは?」 「これぞお世辞のお手本」 「何だ、お世辞か」 「いや、ほんとほんと。本当に美味でした」 「そんな『ほんと』を連発されると、かえって信じられなくなる」 「本心から言ってるのに〜。日本語って難しい」 「みきちゃんが使ってるのは、差し詰め、“ぬほんご”だな」 「ひどい〜。そこまで言われる筋合いない」 「どうかね。――本題にそろそろ戻ろうか。この本、まだ読み終わってなかった」 「今日は本読みで終わるのね」 「ああ。このあと七時から、『マル秘!本当にあった宇宙人の痕跡!』を観た いんだ」 「少し前に、似たようなタイトルの、やってなかった? 『恐怖!本当にあっ た吸血鬼の痕跡!』ってな感じの」 「それは前の前だ。前回は、『未来へ!本当に的中した予言の数々』だ」 「のほほんとしているのに、こんなことだけは記憶力抜群なんだね。ま、本田 にいちゃんの一番の取り柄だし」 「おまえ、さっきのリベンジのつもりか。ならば、こっちがリベンジの見本を 見せてやろう」 「ご、ご冗談を。尊敬する本田にいちゃんに謀反を起こすなんてつもりは、さ らさらありませんです」 「こいつめ、ほんと、調子いいな」 「それもこれも本田にいちゃんの人徳のなせる技」 「意味が分からん。もういいや。本に戻るぞ」 〜 〜 〜 「本田にいちゃん、『はこねゆほん』て、どこにあるの?」 「やけに唐突だな。はこねゆほんて、もしかすると、はこねゆもとのことか?」 「ああ、これ、ゆもとって読むの」 「そうだよ。さっきの物語に温泉が出てきたから、思い出したって訳か」 「うん。温泉で有名でしょ? 昔、行ったことあるし」 「だったら、箱根湯本は駅名で、地名としては箱根町の湯本らしいぞ」 「えー、嘘だよ。本田にいちゃん、私が物を知らないからって馬鹿にして」 「嘘じゃないよ。――ほら、本に出てる」 「……うー。そんなことより、本田にいちゃん」 「また話をそらして逃げたな」 「元々の用事を伝えに来たの、思い出したのよっ。古本屋に売る本、早く決め なさいって、おばさんが言ってた」 「あ、その話か。前から言われてんだよな〜。テレホンでも手紙でも言われた。 でも、催促されても、全然決められなくってさ」 「悩む必要なんてないじゃん。ベッドの下にある、エロ本とかさ」 「ばっ――何で」 「知ってるよ〜、とっくの昔から」 「あ、あんなもの、売れないの。ていうか、買い取らないの、古本屋の方も」 「ふうん。高く売れそうなのに」 「ないない。高く売れるのは……手漉きの和紙で作られた古い和本なんかかな。 いや、その前に、みきちゃん。ベッドの下のこと、秘密にしておいてくれない かな?」 「口止め料をくれたら、いいよ」 「……仕方ない。今、金欠だが、そのための金を、本を売って作るか。いくら ほしいんだ? 一応、聞いておく」 「最低でもこれくらい」 「……何だ、その四本指は? 四千円?」 「ううん。ほんの四万円」 「高いよ!」 ――終わり
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