●長編 #0525の修正
★タイトルと名前
親文書
★内容(1行全角40字未満、500行まで)
3 それから俺は、胸の病気の治療の為に、市民病院の呼吸器科に行った。 待合室の長椅子に座っていたら、「よっこいしょ」と、 トートバッグを持った牛山が腰を下ろした。 「あれー、なにー。つーか昨日はえらい目にあったよ。 今もやくざに絡まれていたんだから」 牛山は咳き込んでいた。ゲホッゲホッ。 咳が収まるとじろりと見て、「おまえさん、なんでこんなところに居るの?」 と言う。 「ちょっとここを」俺は胸の当たりを押えて見せた。「でもずーっと 通院でやっているんだよ。シフトに穴あけて迷惑かけても悪いし。 そっちはどうしたの」 「ずーっと咳が止まらなかったやろ。かにてんてんや」 「かにてんてん」 やっぱりな。糖尿で人工透析までしているのに今度はかにてんてんか。 「妹の病院で診てもらえばいいのに」 「だめだ、あんな研修医しかいない交通事故の専門病院なんて」 そして又ゲホッゲホッ。「こんどはダメかも知れないなぁ」 「なに弱気になってんだよ。大丈夫だよ」 「気休め言うな。俺には分かっている。それに考えている事もあるんよ」 「なに?」 「俺が死んだら保険金が入るんだが。 それをカミールに渡して有効に使って欲しいんだが。 彼女が、借金を返して、国に帰って、両親と使えば有効だろう。 しかし、日本で渡して、散財されても無駄になってしまう。 それに、受取人をカミールにしても、 あんなパスポート、偽造かも知れないしなぁ。 そこで、誰か信用出来る奴に受取人になってもらって、 カミールの故郷に持って行ってもらいたいのだが。 もっともそんな事を引き受ける奴は常識のない奴なんだろうが」 「そんなの俺に聞かせてどうするの? 俺にやれって事?」 「そうじゃないけどなぁ、ゲホッゲホッ。 ところで、昨日運転していて捕まったそうだな。 どうする積りだ。一人三百万の借金だからなあ。四人だったら千二百」 「それ、保険金で払っていいって話?」 「全然違うよ。別の話だ。あんた、狙われているよ。 やくざじゃなくて、マネージャーに。 あんた、タイーホされた女のかわりに新しい女を入れろ言われているだろ。 それができないんだったら、これで落とし前つけにゃならんって、 預かってきたんよ」とトートバッグを開いてタオルを広げた。 そこにはハジキが。 牛山はそれをタオルで包むとこっちに押し付けてきた。 「なんだ、これ。本物か」 「当たり前だ。そんなものおもちゃでどうするぅ、ゲホッゲホッ。 あんた、それを使いたくなかったら、女を入れるしかないで」 「どうやって」 「それは、やなぁ」牛山はめもを渡してきた。 ツイッターのユーザー名らしき名前が四つ。 「あんたがなあ、野郎を探してだなあ、そのツイッターの女と見合いさせるんよ。 そんでそいつらが身元保証人になってだなあ、 成田の入管を通して、入国させるんよ。そんでマネージャーに返すんよ」 「そんな事する男、ここらへんに居る?」 「できなかったらそれで自殺するしかないぞ」 「そんなぁ」 「結婚相手が見付かったら、カミールに報告しておいて。窓口はカミールなので」 牛山は診察室に消えて行った。 俺は、タオルに包まれたハジキを抱えたまま途方に暮れる。 病院で処置を終えて建物の外に出てくると、スマホが鳴った。 すわやくざ! 良美さんだった。 「今、お兄さんに会ったけど、良美さんの事伝えるの忘れちゃったよ」 「何だ、折角個室用の透析器が入ったのに」 「お兄さん、相当悪そうだったな。かにてんてんの方が」 「ああ、うーん。血液クレンジングみたいなのやればよくなるかなぁ。 つーかキース・リチャーズみたいに血液全取替すればいいのか」 「俺が血液クレンジングしてもらいたいよ」 「えー、なんですって」 「いや。俺がかにてんてんなんてことはないんだけどね。 あまりにもややこしい事になってきたので、自分をリセットしたい気分なんだよ」
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