AWC 夜の虎(能書き)     青木無常


        
#2792/5495 長編
★タイトル (GVJ     )  94/10/12   2:44  (116)
夜の虎(能書き)     青木無常
★内容
 えーと、そういうわけで落選見本です。

 その前に今回は、みっともない話なのは承知の上で感傷的なことを書かせてくだ
さい。

「心の中だけに存在する」黄金の物語。

 とくに長篇志向のアマチュア作家にとっては思いあたる部分のずいぶんある言葉
なのではないかと思っています。
 夢想する物語は心の中にあるかぎり黄金の輝きを放ちつづけている。でも、それ
を一部なりとも形にしてしまうと輝きはとたんに色あせ、無惨な実体をさらけだす。
 だから心中にわだかまって形をなさぬまま、ただ黄金の物語という幻の地位だけ
をよりどころに、それはいつまでもたゆたたせたままでいるのが、もしかしたら一
番こころよい状態であるのかもしれません。
 まあ、それで満足できるのならば、ね。

 私は宇宙を舞台とした冒険物語、いわゆるスペースオペラとよばれるものが好き
です。
 そして、そういう物語を自分の手で生み出してみたい、という願望が創作活動と
やらに手を染めたそもそもの大きな動因のひとつでもあります。
 プロの作家を目ざした時点で私にとっての理想の肩書きというのも、SF作家、
それも(好意的な意味での)スペースオペラの書き手、といったところでした。
 しかしそれもここ数年、一部のごく短い作品をのぞいて手つかずの状態のままで
した。
 AWCにおける活動の楽しさ、居心地のよさがその原因のひとつです。が、なに
よりも自分の力量に根本的に自信が欠落していたことがその最大の原因であること
は、まあまったくまちがいはありません。
 それ以前に書いたそれらしき作品の無惨さには目をおおいたくなるものがあるし、
なによりもこういった物語を描くにあたって必要不可欠な最低限の科学的知識が私
の場合、根っこの部分からころりとぬけ落ちているわけです。
 まあ、べつにそれだけが私の力量不足の原因ではあるとは思ってはいませんが、
ね(^^;)。
 べつにハードSFを書こうなんて野望を抱いているわけではありませんから物理
学者なみの知識を習得する必要に迫られているわけではないのですが、それにして
も最低限必要な、いわゆる“常識”を獲得しなければならない、という思いはつね
に私にとって強迫観念と化してつきまとっています。
 AWCでの作品がファンタシー系の物語やアクションホラー等がメインであった
のも、むろんこれらのジャンルの作品が好きで好きでしかたがないという一面もあ
りましたが、それ以上に、自分のもっとも描きたい世界、もっともあこがれている
世界を描ききる自信がまるでなかったことこそが、その大きな一因です。
 あるいはその部分さえ克服してしまえば問題はすべて解決する、といったバカげ
たいいわけさえもが、私の脳のかたすみにはいつもいすわってさえいます。そのく
せ必要な努力になど手をのばしさえしないのだから、これはもうお話にはなりませ
ん。
 だからもう、待つのはやめました。
 あいかわらず学ばねばならないことは山積みのままですが、とりあえずいまの自
分をさらけ出してしまうことを自分に対して課してみたわけです。
 結果は予想どおり、無惨なものでした。
 黄金の物語はずたずたのボロと化して私の眼前にその四肢を横たえ、みじめった
らしいうめき声をあげているようです。そして情けないことに、私にはその問題点
が奈辺にあるのかさっぱりつかめていないていたらく。
 でもまあ、とにかく書きました。これからも、すこしずつ、ぼちぼちとしたペー
スででもこちらの方面の“黄金の物語”を書き出していこうと思っています。無惨
なその実体が眼前にさらされてしまうことを覚悟しつつ。
 もし可能なら、とりわけ科学的におかしい部分、かったるい部分等をご指摘いた
だければ幸甚です。が、まあ、とうぜんのことながら勉強します(^^;)。はい。
 とまあ、そういうわけで、私はもう待つのはやめました。

 この作品は第6回日本ファンタジーノベル大賞に応募して落選したものです。
 以上、能書きおわり。以下はあらすじです。

    夜の虎・概要

 惑星ジョシュアの軌道上で、ステーションに寄航しようとしていた恒星船が襲撃
された。惑星防衛ラインを形成するトーチカを占拠した襲撃者たちは自らを“アム
ルタート舞踏教団”と名乗り「ジーナ・シャグラトの秘密をわたせ」との要求を情
報部に対してつきつけてきたのだ。
 一方“夜の虎”と異名をとる伝説の殺し屋バラムは暗黒街の統治者ジョルダン・
ウシャルを暗殺するため、ウシャルの主催するパーティに潜入していた。驚異的な
肉体能力を発揮するバラムは、かつて“フィスツ”という名で知られていた武器商
ギルドが開発した強化人間であり、その組織を自らの手で粉砕した野獣のように危
険な男であった。
 情報部のエージェントと称する美貌の女マリッドに妨害を受けながらも、バラム
はウシャルを追いつめていく。だが“舞踏教団”のテロによる惑星規模の異変と情
報部員たちの妨害、そして突如あらわれた教団の突撃艇の強襲などに阻まれて、標
的を拉致されてしまう。どうやら“ジーナ・シャグラトの秘密”にはジョルダン・
ウシャルもまた何らかの形で関わっているらしい。
 成り行き上、共闘路線を決め込んだバラムとマリッドは、脅迫者たちが占拠する
トーチカへと強行突入した。そこで出会った教団の首魁シャルカーン・バールカイ
ベルの命により、顔面に火焔模様の入墨をしたハリ・ファジル・ハーンという名の
男がバラムと対峙する。そして驚くべきことに、この男はバラムと同じ強化人間で
あった。壊滅したはずの“フィスツ”の遺産が、なぜ?
 苦戦の末にジョルダン・ウシャルを奪われてしまったバラムとマリッドは“ジー
ナ・シャグラトの秘密”をさぐりはじめた。七三年前にジョシュアの衛星上の都市
ラウダスを襲った謎の爆発事件の場で死んだジーナ・シャグラトという名の女は、
父アルウィン・シャグラト教授とともに先史文明人ジョシュアーンの研究をしてい
た人物だった。ラウダスの崩壊と同時にジョシュアーン関連の研究者はほぼ失われ
ていたが、唯一生き残ったハニ・ガラハッドという人物がクラルの旧市街、見捨て
られた地下深くの廃虚に隠棲しているという。だが、そこを訪れたバラムは隠者ハ
ニが殺害されているところに行きあたり、さらには舞踏教団の暗殺者の襲撃を受け
た。からくも暗殺者を退けたバラムの前で、マリッドは神聖銀河帝国発祥の神秘的
能力“屍魂召還”を駆使して新たなる手がかりを得る。
 だが惑星ラベナドの空中庭園にある天使像を目指すバラムたちの前に、またもや
舞踏教団の妨害が入る。“秘密”の重大な一環をなすという空中庭園の天使像を教
団におさえられ、さらにはマリッドをも強奪されたバラムは、情報部から教団のア
ジトがイムジェフィフタスに存在するという情報を受けて単身、乗りこんだ。
 強化された肉体がその限界をこえた酷使のために変調を起こし、傷つきとらえら
れたバラムは、マリッドの口から壊滅したはずの“フィスツ”の復活を告げられた。
ハリ・ファジル・ハーンは新生フィスツの改良型強化人間。そしてマリッドもまた
フィスツの兵器であり、新旧強化人間の対決を見とどけるためにこの事件に投入さ
れたことをも知らされた。
 逃亡に失敗してふたたびとらえられたバラムとマリッドの前で、バールカイベル
の口により“ジーナ・シャグラトの秘密”が明かされる。それは先史文明人ジョシ
ュアーンが遺した異様な形の不老不死の秘法であり、天使像はその秘法をほどこさ
れたジーナ・シャグラトの変貌した姿である、というのだ。そしてジーナ・シャグ
ラトが復活するとき、ラウダスの崩壊と同じ巨大なエネルギーの解放現象が生じる
らしい。
 わずかな隙をついて、奇跡的に復活した強化能力を駆使し、ハリ・ファジル・ハ
ーンを下して脱出に移行しようとしたバラムとマリッドの前で、秘密の核心、ジー
ナ・シャグラト復活の鍵を、傷ついたジョルダン・ウシャルが発動させた。なおも
立ち上がるファジル・ハーンとの対決を前にバラムはマリッドに脱出をうながす。
再会を約束して脱出を果たすマリッドの背後で、最後の対決の結果もわからぬまま
に、閃光が炸裂した。
 ひとり生き延びたマリッドは後日宙港で、死んだはずのバラムを見かけたという
噂を耳にし、彼を追って旅立った。
                                 以上概要




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