AWC

2004年第17回AWC大賞部門賞投票・選評


投票者:/OAK

 部門賞の投票をします。下記の各作品に1票ずつです。

短編賞:
  麻村帆乃  春が来たよ  (#163 お題作品)
 ほのぼのとして、夢の中にいるような雰囲気。
 テンポが速く、文章の流れも良い。
 @引用開始@
「4月1日木曜日。妖精の国入り口に行きましょう」
 出せなかった誘いの手紙。
 @引用終了@
 ここが特にいい。

文芸賞:
 談知  バンコクの夜  (短編ボード #226)
 異国情緒たっぷりで、思想的に無理がなく、文章の癖も比較的少ないので、私好みである。
 @引用開始@
 バンコクのドンムアイ空港に着く。タラップが近づいてくる。ド
アが開く。外にでる。とたんにむあっという南国の空気がワタシを
包む。あれは何のにおいだろう。南国特有のフルーツか何か、ある
いは唐辛子か何かのような独特のにおい。
 @引用終了@
 ここがいい。

長編賞:
 永山  天衣無法 1〜3  (#223〜225)
 マジックに寄せる作者の気持ちが、にじみ出ている。例えば…、
 @引用開始@
「だけど、分からない内は必死になれて、本気で考えたわ。もしも本当の事件
じゃなく、マジックだったなら楽しめたと思う」
「そう。面白いのは、種じゃない。マジックそのものなんだ」
 @引用終了@

  以上、誤字や変換ミスがあれば、ご判読ください。

投票者:久作

短編
一連の談知さんエッセイに1票。
とにかく今年後半(っていぅか終盤)に濃密なアップで印象が強い。
127「詩・波紋」野依はくろさん作に1票
短詩型好きの私は、こういうのがツボかも。ただ方向性は何となく解るのですが、そこまで改行せぬでも……と思う箇所もあったりはしましたけれども、全体としての印象が好みってことで。
次点106「落選文書」$フィンさん
なるほど「落選」しそうだと呟いたは、内緒。でも、$フィンさんらしくて、個人的には好きですね。ポテポテした語り口。談知さんのエッセイと、どっちに入れようか最後まで迷いました。「詩・波紋」は好きなのですが、さほど珍しい発想ではなく綺麗な分だけ損をしていて、私の中では0.8票、残る1.2票を何連に入れるかが、問題となったのですが……。失敬。

長編 棄権
あくまで作品数のみから云えば、低調な年であったかも。

連載 苦悩の末に棄権
実はヨウジさんの連載に2票を投じようと一瞬だけ考えたが、止めました。ここ十年ほどか、旧来の合理的な利害を動機とする犯罪以外で、クローズアップされるものが多くなってきています。最近では、奈良の不幸な事件がありました。少なくとも現時点までの報道では、被害者は何も悪いことをしておらず、父母眷属への恨みでもなく金銭目的でもなさそうです。動機は飽くまで犯人(別に現在拘束されている人物が真犯人と断じているワケではありませんんので念のため←真犯人かもしれないが、少なくとも現時点では不確定)のココロの裡にのみある。この「ココロの裡」を、法廷好みの客観事実の次元にまで上げ底するため、心理学だか精神分析学だか精神病理学だか、1930年代に流行った変態性欲だかが跋扈してもいますが、さて、どれほど普及し説得力をもっているか。
そんな変態が権力の中枢に居座っていても、実は別に不思議でも何でもない御時世ではある。最近とみに某コメ国は危なっかしいし。
故にこそ、ヨウジさんの作品は興味深いリアリティーを現在に於いて仄めかせてはいるものの、やはり「小説」と自称されるならば(少なくとも御自作の中で「権力の陰謀」は「小説」と説明しておられる)、やはり「小説」として、それなりの説得力が必要かと。即ち、旧来の犯罪小説の如く、金・女・権力・恨みって分かり易く古くさい動機なんざ無視して、単に「いやぁ実は犯人は変態だったんすよ」で十分に結構なのですけれども、其の変態性の、または単なる変態性が動機となり得る世界だって表現が、やはり欲しいと思うのです。このようなことは恐らく、まだ【暗黙の了解】までには至っていないってのが、私の立場ですから。

文芸賞 棄権
短編で、小説以外の詩やエッセイに投票してしまったため。

投票者:$フィン

部門賞に投票しますね。といっても今年は作品が少ないので、各1票ずつ投票することにします。

1.長編賞     長編ボードにアップされた作品が対象
  219〜222 失楽浄土 1〜4   永山さん
  どこぞで起こった事件にヒントを得た物語。時事性にもとんでどこぞで起こったような悲惨なことにならず、安堵感があります。
  当時興味深く面白く読んだことを覚えています。

  2.短編賞     同じく短編ボード
  167 お題>エロ小説>暗黒神のくちづけ 憑木影さん
  やっぱり憑木影さんは上手だなと思いました。エロくて双子のお話
  変態どるちゃんの趣味嗜好にあったお話でありました。

  3.連載賞     同じく連載ボード
  250〜254 257 263 275 276 281 289 293 299 324 345
  alive(0)〜(16)   佐藤水美さん
  まだ未完のもののやおいらしくえっちなシーンもあり面白かったです。ここ最近は物語がでていないので寂しく思っています。ぜひ今年中に完結してくれることを祈っています。

  4.文芸賞     小説以外の作品が対象
         − 作者を対象とした賞 −
  棄権します。
 
 5.個人賞     上記の賞全ての投票数を合計して一番得票数の多かった作者
  棄権します。

投票者:ミヤザキ

長編賞 

まったく読めていないためパス。

短編賞

森村桂さんのこと(談知さん)

 考えてみれば、作家なんて、書くだけの理由があるうちは書くべきだろうが、
理由がなくなったらあっさり筆を絶ったほうがいいのかもしれない。というとこ
ろに共感。私も彼女の作品は好きでした。合掌。

連載賞

まったく読めてないのでパス。

以上です。

投票者:らいと・ひる

■連載賞


そりゃないぜ!の恋/寺嶋公香さん(永山さん)

 いつも楽しみに読んでおります。というか、連載ではこれしか読んでない。
 佐藤さんの「alive」はきっかけがあれば読んでみたいのだけど、ジャンル的に少し躊躇しております……^^;


■長編賞

天衣無法/永山さん

 長編にアップされた中では個人的には一押しの作品。作者のマジックやトリックへの愛情に溢れた内容でもあると思います。
 もし可能ならば、2票入れたかったほど。


失楽浄土/永山さん

 市ノ瀬メイというキャラが気に入っておりますし、やや時事的な内容も悪くないですし、ハッピーエンドテイストも好みではあります。


■短編賞


お題>春が来たよ/麻村帆乃さん

 とても丁寧に描かれた情景が清々しくも感じます。そして読み終わった後にほんのりと懐古的になる感じがよいですね。


お題>スイカ〜御伽噺  $フィンさん

 久作さんのお題とどちらにしようか迷いましたが、インパクトとしては$さんの作品の方が大きいのでこちらに投票を。なんといっても、読んでから半年近く経つというのに、内容を明確に覚えているくらいですからね。


■文芸賞


一連のエッセイ(#179〜)/談知さん

 けして堅苦しくなく軽やかに書かれた文体は惹かれるものがあります。ちょっとした日常の切れ端を生き生きと書けるのは羨ましいものです。と、無い物ねだりかな。


フレッシュボイスの書評/永山さん

 二票あることだし、せっかくなので投票します。最近、推理物も読むようになってきたので永山さんの書評は参考になります。
 ネタバレのない範囲で、最大限の紹介をしてくれるのがありがたいですね。まあ、書評もここまでくれば芸術の域に達するのかもしれないということでの一票。

投票者:永山

 恒例行事とはいえ、集計お疲れ様です>祭さん。
 ……少し前のテレビ番組で、「ご苦労様」だけでなく「お疲れ様」も、目上の人に使わないのが妥当という話が出て来たので、えっほんと?と思いつつ、変えようとしたのですが、適当な言葉が見つからず。

 投票に当たっては敬称を略しました。
 各部門の初めに掲げた二つが票を投じる対象です。なお、それに際しての作品毎の一言の前にある記号、*は初読直後に、「いい! 気に入った!」と感じた作品、・はその他です。

1.長編賞
 らいと・ひる :もうひとりの私(tp version) (226〜232)
*傾向がいつもと違って、興味深く読みました。これが後の変貌に続くとは。

 らいと・ひる :お題>スイカ〜Revenge (238〜241)
*やられた感が強くありました。

 (私にとっては)対象作品が少なく、すんなり決められました。
 「らいとさんは元々こういう傾向の作品も書く人だ」と承知していれば、ここまで高評価につながらなかったかもしれませんが、それでも充分楽しめました。『この優しくも残酷な世界』もよかったですけれど、票を投じた二編に比べると私の好みから遠いということで。
 泰彦さんの『水と和音(わおん) (とりあえず版)』は、作者のやりたいことは凄くよく分かった(つもり)です。とりあえず版であることと、シリーズ化(連作短編)を意図したものとのお話でしたので、近い将来での結実に期待してます。


2.短編賞
 時 貴斗 :蜜柑って知ってるか (142)
*この賞の常連故、厳しめに見たつもりですが、やはり読み応えが秀でてます。

 蓮見 琳人 :お題>春が来たよ! (154)
*叙述トリックが光る。油断していたとは言え、やられました。

 最も悩んだ部門。*マークを付けた作品がいくつかあって、好みとか面白さでは、ほとんど差はないのだけれど、分量の面であっさりした物が多かった。そんな中、『蜜柑って知ってるか』は読み応えもあり、まず選びました。
 もう一編は更に悩みまして、ミステリ風味ということで、『お題>春が来たよ!』に決めました。これも、「蓮見さんはこの手の物も書く人だ」との認識があったら、ちょっとシンプルに過ぎるかなという気もするのですが、落ちに意外さを感じたのは事実なので。やられました。
 他では、同じく蓮見さんの『桜の下で』、$フィンさん『桜の下で』や『お題>スイカ〜御伽噺』、麻村さん『お題>春が来たよ』、らいとさん『お題>スイカ二編、葵匠さん『ゼロ』、憑木影さん『お題>エロ小説>暗黒神のくちづけ』といったところが気になりました。総花っぽくてすみません。


3.連載賞
 佐藤水美 :alive (250〜 継続中)
*ジャンルがアレで取っ付きにくさはあるかもしれませんが、本格的な印象。

 Trash-in :寝床 (272〜 継続中)
・落語の演者をそのまま描写したような箇所がやや不満。続きが読みたいです。

 オリジナルの連載小説をという姿勢で選んでますから、それだけでもう限られてきて、あとは筆力を比べれば、必然的に決定というか……。
 そういう状況は横に置いて、『alive』は、このジャンルの小説でも面白く読めるってことに、私自身びっくりさせられました(笑)。これの続きも読みたいけれど、長編ボードの『アトランティック・サーガ』も、(内容を私が忘れない内に)読みたいなと。


5.文芸賞
 悠歩 :悠歩の昔語り その1「どぶ川のザリガニ」 (短編ボード 206)
・環境は若干違えど、懐かしさを覚えました。

 談知 :株式投資 (短編ボード 251)
・初めて株に手を出したときのことを思い出しました。

 竹木さんの緒作にもよいものを感じましたが、この賞の常連さんということで、今回は見送らせていただきました。
 悠歩さんには「その2」以降を早い内に期待(小説も期待してます)。「昔語り」と銘打ったのが縛りになってなければよいのですが。
 談知さんも、今はひと休みといったところでしょうか。怒涛の連日UP再開が待たれます。投票に関しては、一連のエッセイ全体に一票の気持ちです。

 こんなところで。ではでは。

投票者:佐野祭

 自分の作品も書けてないくらいで、あまり人の作品も読めてないのですが、と
りあえず手短に。

・長編賞
 永山 天衣無法

 この作品を選んだのは、私がマジックをテーマにしたミステリー作家泡坂妻夫
のファンだからかも知れません。

投票者:Trash-in

すべての作品を読んだわけでもなく、しかも自分の好みを抜きにした投票はできないので、偏りがあると思いますが、いくつか選びました。


1.長編賞
 あまり読めなかったので、一票だけ投票します。 

 「水と和音(とりあえず版) : 泰彦さん」

 「水と和音」は過剰な「甘さ」がなく(思春期を扱った小説で「甘さ」が過剰なものは苦手なので)、地に足がついている感じがして、好感の持てる作品でした。
 佐知絵が図書館で「大漢和辞典」をほれぼれと眺めてしまう、そういう細かいキャラクターの味付けが好きです(この設定はとても気に入りました)。
 気になる点は、佐知絵が狂言回しになっているためか、佐知絵の心理描写が少なく、ラストの変化が説明不足に感じられました。
 あと、和音の大舞台での成功が唐突というか、違和感を感じました。大役を見事に果たしきるのではなくて、よろよろしながらなんとかやり切った程度にとどめておくという手もあったのではないかと思いました。その後も和音が大変身したわけではないので、不都合はないと思います。完璧ではなくても、やり抜いたという事実だけで自信がついてしまったという展開の方がリアリティがあるかなあ、と(あまり自信がありません)。ただ、そうなると地味になりすぎるかもしれませんが。
 シリーズ化の予定があるということなので、佐知絵をもうちょっと詳しく描写した作品が読んでみたいです。


 もう一票は棄権します。

2.短編賞
 だいたい読んだので、二作品選びました。(@Aの順序は発表日の古い順)
@「幸福の四葉 : 永山さん」
A「桜の下で : $フィンさん」

@は、先輩にも事情の話せない三反薗の、心理描写というか駆け引きが巧みで読み応えがありました。こういう状況に主人公を落とし込み、しかもその後で警察に事情を話せるように合理的な解決を盛り込む作者の手腕に感心しました。
 と、良質な作品であることを前提に、以下私のワガママを書きます。
 誘拐事件の解決までに、もう一ヤマ欲しかった。もうちょっとねばったストーリーが読みたかったし、もっとねばれたと思います。そうなると、短編ではなくなるし、永山さんの発表ペースを考えると、やはりワガママでしょうね。

Aは、なんというか、奇妙なユーモアが感じられる不思議なもので、素晴らしい作品でした。$フィンさんの小説を読んだのはこれが初めてだったのですが、桜の妖しさを上手く利用したと思います。この感想を上手く表現できないのがもどかしい。「幼児のもつ残酷さ」に似た何かを漠然と感じたのですが、上手く説明できそうにありません。
 物語はかなりのハイテンポで進んでいくのですが、語り手のトンデモナイ行動を、ですます調の丁寧な文章が不協和音のように不気味さを煽っていて、これが桜の妖しさと相俟って、読んでいる間、濃い霧が周りにたちこめているような感覚がありました。しかもまるで結末が見えず、この物語はどこに着地するのだろうと思いながら釣り込まれました。最後の一行が特に気に入りました。この一行にユーモアを感じる私は、かなり特殊なのだと思いますが。

次点というか、二票という制約がなければ選んだ作品も挙げておきます。
B「春が来たよ : 麻村帆乃さん」
C「スイカ〜御伽噺 : $フィンさん」
Bは、あっさりとした(いい意味でです)、郷愁を誘う読後感が印象に残りました。
Cは、いきなり「ち○ぽ」とあったので、笑ってしまいました。女王様がナイスバディっていうのもいいですね。

3.連載賞
 ほとんど読めなかったので、棄権します。

4.文芸賞
@悠歩の昔語り その1「どぶ川のザリガニ」
A談知さんの一連のエッセイ
@は、ザリガニ捕獲の懐かしさに一票。私が育った地方では、豊橋が近かったせいか、餌にちくわを使っていた記憶があります(「豊橋名産ヤマサのちくわ」というCMが懐かしい)。
Aは内容が多岐にわたっているのですが、株式投資の話を特に面白く読みました。
「野村證券のバーチャル投資」の回です。何もせずに放っておいたら、損している人間の方が圧倒的に多かったという、哀しさの滲む皮肉なレポートがいいですね。

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